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どっかの分隊長
今こそ始まりの時
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たのはコイツではないし、確かに本当に殺す気はなかったのだろうということは理解できる。しかし…。

俺は90°に頭を下げている男の兵士の横を、黙って通り抜けた。彼女を殺された怒りの矛先をどこに向ければ良いのか俺にはわからない。アイナは「すぐ目の前に私を殺した相手が居るのに何で殺さないのか」と、怒るだろうか。殺すために死にたくなるほど学んだ技術も知識も、殺したい≠ニいう意思がなければ意味がない。そして、俺は彼を殺す気にはなれなかった。

別に兵士を許した訳ではない。ただ――――無意味な気がしたのだ。

『こいつを殺した所でアイナが戻ってくる訳ではない。』『でも、アイナを殺したのはこいつなんだから殺すべき。』『でも、殺してなんになる。アイナが喜ぶ?そんなわけないだろう。彼女はもう死んだんだ。』『だからこそ、アイナを殺した奴がのうのうと生きて居るのが許せるのか?』『俺の許せる許せないはどうでもいい。』『だったら殺さないべきだろう。復讐は連鎖する。どうせアイナはもうこの世にいないんだ。だったらもういいだろう。』『でも―――――――』『今からでも間に合う。』『だからといって殺してなんになるというんだ。アイナはもしかしたらそんな事望んで無いかもしれないじゃないか。』『だったらお前、自分が殺されたとして、殺した相手が憎く無いのか。』

脳内で葛藤、、、結局答えは良く分からないまま、喜怒哀楽どれかも分からない感情だけが、モゾモゾとマムシのようにはいずっているような、最悪な気分。

『俺は、アイナは……どうすればいい。どうしたら喜ぶ。』



そんな思いを抱えながら眠り、翌日、、、、、あの兵士が死んだと報告があった。

『……え?』

死因は神経衰弱症。部屋で静かに息を引き取ったようだ。

彼は外道であったが、同時に人類に大いに役に立っていたらしい。憲兵団のほぼ半分は彼が支えていたとか。
彼は―――――悪ではなかったのか?いや、アイナを殺したのはあいつだ。でも、それは人類のためで、世界から見れば善だったのかもしれない。分からない。分からない。
怒りは矛先を相手に向ける事は無く、でも相手は死んだ。だったら殺しておけばよかった?でも、死んだんならいいじゃないか。でも、彼は、、、

……こんな、どうしよもない思いが、今も尚、胸の中のどこかに突っかかっている。



「ぃ……ぉい……おい!!」
「……ぁ、失礼しました。なんでしょうか。」

……教官の声出目が覚める。どうやら過去にすこし浸りすぎていたようだ。

「貴様、、、なんという目を………まぁ、いい。準備ご苦労。もう戻って良いぞ。」
「了解。」

教官の言葉に従い、グラウンドを抜けて、木材で作られた質素な駐屯所に入る。…今、階段上ったらギシギシ言ったぞ、おい。
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