三幕 惜別のベアウルフ
4幕
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「ねえ、エル」
「なにっ? アブナイから出ちゃだめだよ」
「ナァ〜!」
「ソウが死んじゃったら、ココ、どうなるの?」
「元にもどるんだよ。エルたちが元いた列車にもどれるの」
「戻ったら、列車、進んじゃうんだよね」
「? うん」
「進んじゃったら、駅に着いちゃうんだよね……駅に着いたら、みんなと……」
「フェイ?」
最後の一撃。ルドガーはローエンと合わせて剣閃を十字に放った。
「「ベルベティスラッシュ!!」」
二人分の剣閃がソウに直撃した。その一撃がトドメとなり、ソウは大きな音を立ててホールデッキに倒れた。
「戦ってみれば、普通の魔物と同じでしたな」
ローエンは息を切らしている。普通の魔物と言っても、つまり魔物と同じだけの性能はあったのだ。老体に無理をさせる戦い方だったかもしれない。
『ちく、しょう……っ』
「もうやめましょう、猫さん」『しかたないけど、悲しいよー!』
なお立ち上がろうとするソウにエリーゼとティポが告げる。エリーゼは繊細だ。元が一匹の猫だっただけに、心痛もひとしおなのだろう。
仲間が目一杯悲しんでくれるからこそ、ルドガーは冷に徹していられる。
真鍮の懐中時計を出して構えた。せめても、早くトドメを刺して楽に――
「やめて!」
視界の端を白い毛が掠めた。その直後にはフェイが倒れたソウに覆い被さっていた。
「フェイ!? どけ、危ないぞっ」
「ソウが死んだら、列車、進んじゃうんでしょ? みんなとサヨナラしなきゃいけないんでしょ? だったらセカイなんて元に戻らないままでいい」
赤い目には涙の膜が張っている。ルドガーはたじろいだ。
会ったばかりで、送ると申し出たのもたまたま近所だったからで、彼女に優しくしたのだって仲間連中で自分ではない。
それなのに、これほど執着される理由が分からなかった。
(それだけ、が、この子にとっては泣くほど嬉しいことだった? たったそれだけのことを、してもらえない環境にいた?)
思い出すのは、ヘリオボーグでフェイがいた、朽ちた温室。壊れた機巧人形。あそこに「帰って来た」と言ったフェイ。
「で、でもフェイっ。ずっと列車の中じゃご飯だって食べられないし、寝るとこだってないですよ」
エリーゼの子どもらしい目線からの説得。シンプルゆえに効くかと思いきや、フェイは大きくかぶりを振った。
「そんなのイラナイ。どうせ何食べたってオイシクナイし、寝てもイヤなユメばっかり見るんだもん。食べるのも寝るのも、もうなくなっていい」
ローエンと顔を見合わせて困り果てた。
フェイの主張は幼く破綻している。だがそれを主張させるだけのバックボーンに自分たちでは太刀打ちできな
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