恋のキューピット
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受け入れて上げて。」
「・・・ハイ・・・っ!」
そう小さく呻き、エリカは走り去った。
残されたのは鈴蘭のみ。
もしこの時、エリカが俯かずに彼女の顔を見ることが出来たなら。
彼女は、このあとに待つ光景を見なくて済んだはずなのに。
「・・・・・・・・・プッ!ククククク・・・!」
常に俯いていたのは、笑い顔を見られないため。悪役のような・・・そう、具体的な例を挙げるなら、『計画どうり・・・!』的な笑みを浮かべた彼女は、小さく呟く。
「私が笑うのはどうかと思うけど・・・彼は心配するだけ無駄な人だよエリカちゃん。」
彼女は、胸元から小型のトランシーバーを取り出し、呟く。
「さぁドクター、準備はOK?」
「・・・・・・。」
エリカの前には、全身を包帯で巻かれた護堂がいる。何も知らない人間が見たら、ミイラかと勘違いするほどに包帯だらけの姿だ。
「・・・・・・・・・あの時と、全く同じ格好じゃない。」
護堂とエリカが始めて出会ったあの時。まだ数日と経っていないあの場面が、数年も前のことのように思える。
あの時は、”神墜としの魔道書”があったからこそ最悪の展開は防げた。しかし、今あの神器は存在しないのだ。ドクターの治療をしてこの状態ならば、あとは運を天に任せるしかないということ。
「護堂・・・護堂・・・!」
いつの間にか彼女は、護堂の手を握って泣いていた。これは、あの時のように、自分が巻き込んだ罪悪感からくる謝罪などではない。彼女の胸はキュウっと締め付けられていた。
顔まで全てを包帯で巻かれ、外気にさらされているのは口元のみ。呼吸も殆ど聞こえないほどに浅い。死んだように眠る護堂の顔を見ていると、彼女の胸に先ほどの言葉が蘇る。
『彼のどんな姿を見ても、受け入れてあげて。』
【聖魔王】のその言葉に半ば突き動かされるように彼女は動く。椅子から立ち上がり、中腰になって自身の顔を彼の顔へと近づける。
「護堂・・・いえ、【混沌の王】。貴方は酷い人ね。・・・折角、私が覚悟を決めたというのに。自分の気持ちに正直になると決めた途端に、私をここまで心配させて・・・。」
優しげな微笑と共に、その距離はどんどんと近づいて・・・
「私、エリカ・ブランデッリは、命ある限り貴方と共にいる。気がついたの。この胸の高鳴りがなんなのか。」
彼を神殺しにしてしまった直接の原因は、彼を巻き込んだ自分にある。そう彼女は信じている。しかし、起きてしまった事は巻き戻せない。だからこそ、最初は義務感で彼のそばにいようとした。だからこそ、【赤銅黒十字】への報告もしないうちにこの船までついてきたのだ。
・・・しかし、今は違う。彼のことを考
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