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久遠の神話
第六十話 嵐の前その十二

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「それとも政治のことか」
「いえ、どちらでもないです」
「そうか、わかった」
「お会いにはなられませんね」
「いや、会おう」
 楽しげに笑って返した言葉だった。
「是非な」
「お会いになられるのですか」
「そうする」 
 執事に対して微笑んで答える。
「この部屋に案内してくれ。飲み物も用意してな」
「お仕事のことでなくともですか」
「それ以外で会ってはならないという決まりはない筈だが」
「それはその通りですが」
「ならいいな」
「わかりました、それでは」
 執事も彼のその言葉に頷いた、こうしてその客人が招かれた。見ればその客人は。
「話を聞いて察していた」
「そうですか」
「だからこそここに来てもらった」
 聡美を見てそのうえでの言葉だった、聡美は席に白いテーブル掛けがかけられたテーブルに座っている権堂の向かい側に立っている。
 その権藤が聡美に言ったのである。
「話を聞きたいからな」
「では」
「飲み物は何がいい」
「お気遣いなく」
「そういう訳にもいかない」
 権藤は遠慮を見せた聡美に微笑んで返した、端正で威厳もあるが硬い何処か慣れていない感じの笑みである。
「客人はもてなすのが礼儀だからな」
「では」
「あらためて聞きたい、何がいいか」
「ではコーヒーを」 
 聡美はこれを所望した。
「お願いします」
「わかった、では」
 権藤は聡美の言葉を受けてテーブルの端に置いていたベルを鳴らした、そして来たメイドに対して言った。
「コーヒーを二つ頼む」
「コーヒーをですね」
「私はブラック、砂糖はなしだが」
「私もそれでお願いします」
 聡美は権藤と同じものを頼んだ。
「それで」
「わかりました、それでは」
 メイドは二人の注文を受けて場を一先ず去った、それから。
 権藤はまだ立っている聡美にこう言った。
「そのまま立っているのもよくない」
「座れというのですね」
「座って話をするのもだ」
「礼儀だから」
「だから座って欲しい」
 こう聡美に告げて聡美も頷いてだった。
 二人で座る、コーヒーも来てそれで話をはじめるのだった。


第六十話   完


                         2013・2・25
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