第六十話 嵐の前その十一
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「そう思いますが」
「確かにそれは」
「貴方もですね」
「家庭は大切にしているつもりです」
権藤は箸を進めながら言う。白い御飯、コシヒカリも食べる。
「妻を迎えた時から」
「それはいいことです。あとですが」
「女性問題ですね」
「異性問題は気をつけて下さい」
女、幹事長はこのことはと言うのである。
「絶対に清潔にしておいて下さい」
「不倫はするなというのですね」
「それは禁物です。かつてはお妾さんがいるのが普通でしたが」
戦後暫く経ってからもそうだった。政治家なり大企業の社長なりそれなりの立場の人間なら妾を囲っているのが普通だった。
岸信介や池田勇人にしてもそうだ、だが今はというと。
「そうした時代は終わりました」
「今では不倫でもですね」
「政治生命を絶たれます」
女性問題、それだけでだというのだ。
「そうなりますので」
「そうですね、ですから」
「金銭スキャンダルもですが異性問題もです」
幹事長は権堂のその目を見て言う。
「お気をつけ下さい」
「その二つに問題がなければ」
「それだけで大きいです」
政治家としてマイナス、選挙や支持におけるそれがなくなるというのだ。
「そこに失言もです」
「それもですね」
「マスコミは我が党の失言には厳しいです」
逆に言えば左翼政党には優しい、これが日本のマスコミだ。
「今だに」
「だからこそですね」
「この三つにお気をつけ頂ければ」
それだけでだいうのだ。
「自然とそれなりになりますので」
「いえ、それなりではなくです」
権藤は幹事長にすかさず言う。
「私が目指すのは」
「党の総裁ですね」
「そして総理大臣です」
それだというのだ。
「国政の第一の者になりたいのです」
「そして日本を」
「はい」
まさにだというのだ。
「今以上に素晴らしい国にします」
「それは今からですね」
「はい、議員になり」
そこからはじまるというのだ。
「その為に尽くしましょう」
「ただ野心があるのではないのですね」
「野心だけでは何にもなりませんので」
それだけならば否定するというのだった。
「ですから」
「そうですね。野心は政治家でなくとも必要ですが」
「そこに実力が伴っていなければ愚か者に過ぎませんので」
「それでは」
「はい、まずは当選してみせます」
「公認を出させてもらいます」
幹事長は言った。
「お任せ下さい」
「有り難うございます、それでは」
権藤は今最も欲しいものを貰った、そうした意味で幹事長との会食は成功だった。だがそのことにも特に感情を見せずに。
そのうえでだった、会食の後で。
己の屋敷に戻りくつろいでいた、そして。
その彼に屋敷の執事が言って来たのだった
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