第六十話 嵐の前その七
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「だからこそだ」
「では」
「そういうことだ」
ここまで言ってそうしてだった、加藤は己のバイクで街の路地裏に向かった。そしてそこで剣士達のそれとはまた別の戦いを楽しんだ。
権藤は夜神戸のある料亭で豪華な夕食を楽しんでいた、見ればそれは懐石料理である。
鱧や蛸、鯛に山菜や新鮮な野菜を様々な料理で飾っている。畳の部屋でそれを共にいる者と食べている。
酒は日本酒だ、その最高級の酒を飲みつつ相席の者に話した。
「それではです」
「はい、出馬の件ですね」
「党の公認をお願いします」
こう相席の壮年の女に言った。
「それで」
「選挙区はここで宜しいですね」
「兵庫で」
「そうさせてもらいますね」
「若し公認jして頂けるなら」
どうなるかというのだ。
「党は議席を一つ手に入れるでしょう」
「必ず当選するからですね」
「はい」
だからだというのだ。
「既に地盤もありますので」
「そして資金も」
「資金援助は不要です」
権藤は見事な漆塗の碗の中の鴨のつくねを箸に取りつつ言う。
「私の方で何とでもなります」
「だからですね」
「はい、そのことはお気遣いなく」
彼の経営している企業の資金、それにだった。
「我が家の資産と支持者の方々からの資金援助で充分です」
「本当にそれで宜しいのですね」
「問題ありません」
何一つとしてだというのだ。
「資金面では」
「それは何よりです。何しろです」
「党にしてもですね」
「お金はといいますと」
女は残念そうに言う。
「満足にないので」
「そうですね」
「財政が豊かな政党もそうありません」
むしろないと言っていい。
「とかく選挙はお金がかかります」
「政治の常ですね」
「それに普段も」
「はい、そうですね」
「政治家というだけでもです」
これだけでもだというのだ、政治家であるというだけで。
「何かと出費があります」
「スタッフへの給与もありますし」
「移動もただではないのですから」
国会のある東京から週末は地元に戻る、その際に使う新幹線の運賃にしても馬鹿にはならないのだ。それが政治家なのだ。
「地元でも東京でも」
「とかく出費が多いですね」
「だからこそです」
こうした話をするのだった、そして。
権藤は微笑みこう女に言った。
「ではです」
「資金はなしということで」
「それでいいので」
「わかりました、では当選して下さい」
「必ずや」
「ようやく与党に戻れました」
女はこのことにはほっとしている感じだった。
「全く、その間は」
「いや、あの政党の政治は酷いものでしたね」
「酷いというものではなく」
それどころかというのだ。
「全くの無策でしたから」
「少なくとも日本の為には
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