暁 〜小説投稿サイト〜
久遠の神話
第六十話 嵐の前その七
[1/2]

[8]前話 [1] 最後 [2]次話
「だからこそだ」
「では」
「そういうことだ」
 ここまで言ってそうしてだった、加藤は己のバイクで街の路地裏に向かった。そしてそこで剣士達のそれとはまた別の戦いを楽しんだ。
 権藤は夜神戸のある料亭で豪華な夕食を楽しんでいた、見ればそれは懐石料理である。
 鱧や蛸、鯛に山菜や新鮮な野菜を様々な料理で飾っている。畳の部屋でそれを共にいる者と食べている。
 酒は日本酒だ、その最高級の酒を飲みつつ相席の者に話した。
「それではです」
「はい、出馬の件ですね」
「党の公認をお願いします」
 こう相席の壮年の女に言った。
「それで」
「選挙区はここで宜しいですね」
「兵庫で」
「そうさせてもらいますね」
「若し公認jして頂けるなら」
 どうなるかというのだ。
「党は議席を一つ手に入れるでしょう」
「必ず当選するからですね」
「はい」
 だからだというのだ。
「既に地盤もありますので」
「そして資金も」
「資金援助は不要です」
 権藤は見事な漆塗の碗の中の鴨のつくねを箸に取りつつ言う。
「私の方で何とでもなります」
「だからですね」
「はい、そのことはお気遣いなく」
 彼の経営している企業の資金、それにだった。
「我が家の資産と支持者の方々からの資金援助で充分です」
「本当にそれで宜しいのですね」
「問題ありません」
 何一つとしてだというのだ。
「資金面では」
「それは何よりです。何しろです」
「党にしてもですね」
「お金はといいますと」
 女は残念そうに言う。
「満足にないので」
「そうですね」
「財政が豊かな政党もそうありません」
 むしろないと言っていい。
「とかく選挙はお金がかかります」
「政治の常ですね」
「それに普段も」
「はい、そうですね」
「政治家というだけでもです」
 これだけでもだというのだ、政治家であるというだけで。
「何かと出費があります」
「スタッフへの給与もありますし」
「移動もただではないのですから」
 国会のある東京から週末は地元に戻る、その際に使う新幹線の運賃にしても馬鹿にはならないのだ。それが政治家なのだ。
「地元でも東京でも」
「とかく出費が多いですね」
「だからこそです」
 こうした話をするのだった、そして。
 権藤は微笑みこう女に言った。
「ではです」
「資金はなしということで」
「それでいいので」
「わかりました、では当選して下さい」
「必ずや」
「ようやく与党に戻れました」
 女はこのことにはほっとしている感じだった。
「全く、その間は」
「いや、あの政党の政治は酷いものでしたね」
「酷いというものではなく」
 それどころかというのだ。
「全くの無策でしたから」
「少なくとも日本の為には
[8]前話 [1] 最後 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2025 肥前のポチ