暁 〜小説投稿サイト〜
レンズ越しのセイレーン
Ready
Ready1 ティタノマキア
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は普段、ユリウスとユースティアしかいないが、バランやアルフレドが来た日には木造のリビングが教室に早変わりする。

 今日もバランはユースティアに過去の知識を教導する。これがアルフレドだと、銃器をはじめとする武器の扱い方訓練会になる。
 無論ユリウスはどちらの「授業」でもユースティアを見守り、彼らが不要なモノをユースティアに教えそうになればストップをかけている。

 プロジェクターで投影した映像を、指揮棒で差しては淀みなく関連事項を言い上げるバラン。ユースティアはそれを聴く。ノートは取らせていない。暗記方式だ。幼い脳には飲み込みにくい話もあるが、詰め込ませている。

 これくらい覚えていないと歴史を変えるなどという大立ち回りはできない。

 こうやって実の娘に負担を強いるのも、ひとえに犠牲になった弟のために。
 自分が、娘がどうにかすれば、弟は必ず助かると確信できるだけの材料があるから。


 ――とある分史で生き延びた弟は、時歪の因子(タイムファクター)化が進み過ぎて、手足はおろか顔面まで黒く染まっていたとアルフレドが語った。
 いつ死んでもおかしくない状態で、娘が過去の自分と出会った年齢になるまでの歳月、他の世界から来る骸殻エージェントを退け続けたというのだから、我が弟ながらさすがというか、無茶というか。

 ユリウスの感想は措いて――そんな世界であっても、弟が生き延びる可能性は決して0ではない。

 だからこそ無茶ができる。無理を通せる。

 いつか遠くない未来、この娘に世界を壊させる時のための準備を、冷静に行えるのだ。

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