雪原の死闘
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えを請う事ができれば、バセットは成長する。
それが出来ないのならば。
第二分隊の旗が落ちるのを見て、アレスは立ち上がった。
勝利に沸く第一分隊とは違い、第二分隊は落ち込んだ様子だった。
連敗が続けば、士気も落ちる。
雪を払って近づいたアレスに気づいて、敬礼で出迎えられる。
「また第一分隊の勝ちだな」
「ええ。でも遊びで負けたからといって何なんです」
「戦場ならそんな言葉も言えないだろう。第二分隊は全員棺に入って帰る事になる」
「戦場と遊びは違いますが」
「雪玉が弾丸にな。バセット伍長、本日をもって君を第二分隊長の任務から解任する」
「な。何を……」
「第一分隊の隊長は私が兼任。カッセル軍曹――君に第二分隊を預ける」
アレスの言葉に、カッセルは目を開いて、小さく笑った。
「了解いたしました」
「勝手な事をいうなっ!」
叫んだのはバセットだ。
暴言に対して、アレスに見られれば、さすがに声を落とす。
しかし、その瞳はアレスの言葉に納得していない。
挑戦的な視線に、アレスは身体から雪を落としながら、周囲にもそれを伝えた。
第二分隊員のメンバーは驚いたようだったが、総じて納得したようだった。
遠くから見てわかったように、多少なりとも確執はあったのだろう。
「一人で勝手に決めないでください。あんたに指揮が取れるのですか」
「初めてだが、それでも君よりは上手く出来ると思うよ」
「ふざけるなっ!」
叫んだ言葉に、アレスは振り返った。
「どちらがふざけている。遊びだろうと、訓練中だぞ。負けたから何だという人間に分隊を任せられると思うか。君は指揮官失格だよ」
「っ――上がどれだけ偉いっていうんだよ!」
バセットがしまったと思った時には、手が出ていた。
握り締めた拳をそのままにアレスに振るえば、誰もが驚きの表情を浮かべる。
上官への暴行で、軍法会議か。
あまりにもしまらない話だが、自分の最後と思えば、それで良いような気もした。
そんな拳を、アレスは紙一重で避けて、拳がバセットに向かった。
+ + +
風をきる拳に、バセットは咄嗟に身体を後ろに倒して、避ける。
それは士官学校出のお坊ちゃんの攻撃ではない。
敵の倒し方を知っている人間の拳だ。
その鋭さにバセットは驚きを見せるが、もはや謝罪するタイミングはない。
どうせ首なら、最後に殴って首になる方がいい。
そう思い、バセットは拳を握りしめた。
その動作に止めようとする隊員達。
それをアレスが止めた。
「身体も冷え切っているところだ。俺も少し運動をしよう」
言葉とともに防寒着を脱いだ。
「後悔するぞ」
「させて見せてくれ」
「はっ!」
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