雪原の死闘
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フ隊長……」
呟いて聞こえた言葉に、バセットは目を覚ました。
上半身はじっとりと汗をかいている。
気だるさの残る身体を起こして、バセットは胸を撫でた。
自分のものと、そしてもう一つ――首元にかかる認識票に、バセットは息を吐く。
五年の時を経ても、いまだに悪夢に襲われる。
それは後悔なのだろう。
あの時に止めておけば良かった。
上の命令など無視すれば良かったのだ。
隊長以下索敵艦に撃墜されたバセットの隊は結局解散となり、仲間たちは散り散りに散っていった。バセットも最前線を転々とし、今では惑星カプチェランカの特務小隊にいる。
なぜ、いまだに自分が軍に残っているのか。
もはや同盟のために戦う気持ちなど失せている。
こちらの命を数としか考えていない者に対する忠誠心など皆無だ。
バセットが忠誠を誓った者は――そして、バセットと苦楽を共にした仲間達は全員死んでいる。
もはや仲間も、新しい隊長も不要だと思い続けてきた。
だが、カッセルに指摘されて思いだしてしまったのだろう。
あの時の仲間達を……そして、結末を。
だからこそ、悪夢を見た。
不愉快だと呟いて、バセットは身体を起こして、シャツを着る。
「俺には必要ないことだ」
仲間も。
隊長も。
呟いた声は、狭い部屋に小さく響いた。
+ + +
防寒用のコートに身を包みながら、アレスは繰り返される雪合戦を見ていた。
所詮は第一分隊――カッセル軍曹率いる隊が圧勝であった。
単純な攻略戦を仕掛けるバセット伍長の第二分隊と違い、カッセルはそこらかしこに罠を仕掛けている。それは落とし穴であったり、あるいはロープを切れば雪玉が降ってくるような古典的なものだ。
だが、その古典的な技術を上手く活用して、第二分隊は大きな打撃を受ける。
しかし、一カ月も同じ訓練を続ければ、人間だれしも進歩はするものだ。
第二分隊は罠に対する対処を覚えてくる。
もっとも、落とし穴を迂回したら、そこに別の罠が仕掛けられているのだが。
相変わらず悪辣な爺さんだ。
それに比べてと、アレスは第二分隊で指揮を執るグレン・バセットに視線をやる。
経歴を見れば、幼年のころから戦い始めて、最前線を次々に転任している。
戦果もあるし、優秀といえば優秀なのであろう。
だが、部隊指揮官としての資質には欠けている。
おそらくは仲間を信用していない。
だからこそ、多くの事を自分でなそうとするし、それが伝わるために周囲との連携がぎこちなくなっている。
そこを悪辣な爺さんが見逃すはずもない。
結果として第二分隊の連敗記録は、今日も更新しそうであった。
どうしたものか。
素直にカッセルに教
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