勝てない理由と偽りの竜
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―――――
ボフッ・・・ボフッ・・・と音を立て、幻術達が消えていく。
「なっ・・・!」
どれだけ作っても、作ったそばから消えていく。
その事実に驚愕するジェメリィに、ティアは告げた。
「アンタは海の夢の中で、究極幻術なるモノを発動した。究極という事は、魔力の消費は1番多いでしょう・・・ま、ハッキリ言えば、魔力切れね」
「そ、そんな・・・バカな・・・!」
ティアの言葉に、更に驚愕の表情を浮かべるジェメリィ。
「そしてアンタは既に・・・魔の海に囚われている」
その言葉に辺りを見回すが、何も無い。
首を傾げていると――――――魔法陣が、展開した。
「なっ・・・なっ・・・!?」
魔法陣は1つじゃない。
1つ現れ、右に避ければその足元に、前に避ければその足元に・・・ジェメリィから逃げ道を完全に奪っていく。
「ああ・・・そうだ。教えてあげる」
「え・・・!?」
「アンタが私に勝てない2つの理由」
魔法陣は更に展開する。
「1つは、幻覚に気がつかなかった事。もう1つは、私がアンタに手を抜く理由がなかった事」
そこまで言い、何かを思い出したように頷いた。
「そうだった・・・これは勝てない理由ではないけれど、1つ言わせてもらうわ」
その間にも、魔法陣は展開する。
塔の床が、青一色に埋め尽くされる。
「アンタの幻術魔法はかなり繊細で美しい。それは認めるわ。だけどね・・・」
刹那。
海の閃光と呼ばれる彼女は―――――
「私はあれを、ドラゴンだとは認めない」
―――――氷の女王と化していた。
「ど、どう、して・・・!?」
ジェメリィは震える声で尋ねる。
ティアは少し目線を逸らし、すぐに真っ直ぐにジェメリィを見つめた。
「・・・私の知ってるドラゴンは、あんな『作り物』の顔をしていないもの」
ドラゴンは絶滅したと言われる生き物だ。
そのドラゴンを『知ってる』というとは・・・とその場にいた全員は驚愕するが、ティアの言う『ドラゴン』は、ジェメリィ達が思い描くのとは全く違う。
「私の知るドラゴンは・・・破壊癖があって、よく食べて、本能のままに生きて、バカで、喧嘩っ早くて、物事を深く考えなくて、楽観的で、そのくせ戦場では頭の回転が速くて、乗り物に弱くて、他人を『仲間』と呼び、仲間の為に戦う奴だから」
その言葉の意味は、ジェメリィには解らない。
そして壁を挿んでいるからか、中にいるグレイ達にはよく通る声も小さく聞こえる。
「どんな時も、生き生きと・・・笑っているから」
彼女の頭に浮かんでいるのは、桜色の髪を揺らし、鱗を模した白銀のマフラ
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