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第一章 〜囚われの少女〜
隠された部屋
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……コツ、二つのゆっくりとした足音が、微かに響く。
 この先に何が起こるのかわからない。恐怖心からか、暗闇の中で聴覚は研ぎ澄まされていく。
 城のことなら知り尽くしていたはずなのに、隠し通路があるとは意外だった。
 暗闇の中、考えだけが巡る。
 この先には誰かがいるのだろうか。それは一体どのような人で、その人はどんな罪を犯したのだろうか。しかし普通、牢屋は城の地下などにあるはず……。
――書斎に連れて行かれたかと思うと本棚の前で立ち止まり、侍女は何やら呪文を唱えた。そうして気が付いた頃にはこの通路にいたのだ。
 このような通路が隠されているなどと、普通なら考えもしないだろう。そんな場所なのだから、異質な感情を抱かないわけにはいかない。
 よく目を凝らすと、とくに汚れている所はなく、妙に小奇麗にしてあるように思えた。

 そして、姫を先導していた侍女は、行き止まりが見えると歩みを止める。
「私めはここより失礼いたします」
 その先には、より一層暗い空気が漂っているようだった。
 鉄の扉が重々しく、道の先を閉鎖している。
「皆様に気づかれないよう時間を稼いでおります。姫様も速やかに、ご自分のお部屋へお戻りになりますよう」
 そう言い残し、侍女は足音を消して元の場所へと戻っていった。
 自分がここにいることは、誰にも悟られてはならないようだ。
 やや焦る気持ちで、侍女に渡されたランプを扉に近づける。ランプの光はその扉の鍵の部分を照らし出す……。
――その鍵は、鎖で厳重に固められているとわかった。
(この先には行ってはいけないのね。ここは……部屋?)
 一体、どんな恐ろしい物があるのだろうか。または恐ろしい人物がいるのだろうか。
 ここまで厳重にする必要があるのか全く見当もつかない。
 ふと、姫は扉から少し左の方へ目動かす。目の高さ程の場所に、鉄格子のはめられた小窓があるのに気付く。
(ここから向こう側が見えるかも)
 姫はすぅー、と息をのみ、恐怖と焦りと不安に苛まれながらも、思い切って向こう側を覗き込む決心をした。


                              −第六幕へ−

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