第二十六話 〜夜に舞う喋 前編【暁 Ver】
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正しなければいけない。すでに『アスナウイルス』に感染してしまっているようだ。この病は子供が影響を受けやすく、特効薬もない。おかしな言動と、突飛な行動を繰り返すようになり、人を驚かすことに喜びを感じるという不治の病だ。不味い、このままではミニチュア版のアスナが誕生してしまう。
なのはさんと、フェイトさんは無表情のままお互いに顔を見合わせ、やがて弾かれたように同じ場所へと顔を向ける。だが既に、その人物が逃走を図った後であると言う事は、この後の朝食でスバルが三人前の食事をぺろりと平らげるであろう事と同じくらいに皆知っている。その証拠にアスナがいなくなっているのを誰一人、疑問に思っていない。……今日来たばかりの二人以外は。
やがて、なのはさんとフェイトさんが、大きく息を吸い込むのを確認すると、ギンガさんとアテンザさんを除く全員が耳をふさいだ。これも、いつもの事だ。ふと、ヴィヴィオを見てみると彼女まで楽しそうに耳を塞いでいた。もうヴィヴィオは手遅れのようだ。
太陽が怯えるように雲へと隠れ、耳に心地よい潮騒を掻き消しながら、二人の怒声が野外訓練場に響き渡った────…
「はぁ、はぁ、あぁ……お腹痛いわ」
「笑い事じゃありません……」
「可愛い悪戯やないか。子供はそれくらい元気があったほうがええ」
「その原因がアスナにあるところが、問題なんですが」
八神部隊長は何も答えず、少しだけ肩を竦めると隊舎へと戻っていく。
「あぁ、そうや。アスナちゃんに、この前の有休申請が出とらん言うといてくれるか? 口で言うだけはあかんて」
「わかりました」
八神部隊長がロビーを通り過ぎるとき、アスナが助けを求めるように視線を送るが、八神部隊長は無言で首を振った。為す術もなく項垂れるアスナ。偶には良い薬だ。今にして思えば、このいつもの日常がこの時までだったことを──── あたしは思い知ることになる。
「だめ、でしょうか」
「うぅん……ナカジマ三佐は、なんて言うとるん?」
「……八神部隊長が許可を下されば……と」
八神はやては、ギンガの言葉を聞くと眉間を揉み解した。午後──── 休憩時間が終わり、部隊長室へ戻ってきて間も無く、ギンガが訪ねてきた。話しの内容は、少なくとも八神はやてを悩ませるには十分なものであった。
ある一つの事件。ギンガが六課へ出向してくる直前まで担当していた──── 猟奇事件。被害者は現在迄二名。いずれも首を絞められての扼殺。ここまでであれば、唯の殺人事件と変わらない。この事件の不可解であり、不快な点は他にあったのだ。
蛾──── そう、蛾だ。被害者の口の中へ、蛾が押し込められていた。はやては、スクリーンに表示されている現場映像を見
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