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第一章 〜囚われの少女〜
少女の名
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それ。一応、食べ物だとは思う。
「これは、何?」
 そこでふと、少女へ質問を投げかけてみる。
「こちらは、明日へ迎える誕生日のケーキでございます。ささやかですがお祝い申し上げます」
 表情は一つも変わらない。仕事の一つをこなしただけのようで、淡々とそう述べた。
「それでは私はこれにて」
 フリルのあしらわれたエプロンの前で手を揃え、少女は丁寧にお辞儀をする。
 闇色のスカートがふわりと広がると、身を翻す。そうして再び、重いドアの向こうに消えていった。
 ガチャリと鍵の音がした後、そこにさらに鎖もかけられる。
 あの少女は、いつもこんな感じだった。
 冷たいと言えばそう感じる人もいるだろう。でも実はそうではなくて、言葉遣いは柔らかく丁寧なものだ。
――逃げようと思えば、いくらでも逃げられただろう。相手は自分よりも小柄な少女。しかも自分より幼いかもしれない。
 しかし、逃げようという欲などは持ち合わせていなかった。決して逃げられはしないと、心の底では感じでいたのかもしれない。

「誕生祝い……これはどういう皮肉なのかしらね?」
 添えてあった小さなフォークで、ケーキの角をふわりとすくいあげる。
 口に入れた瞬間――甘い。
 ひんやりとしたクリームと、ふわふわの生地。この触感には、予想外の衝撃を覚えた。
(なんて不思議な味なのかしら……)
 “ケーキ”は最後に食べることに。
 それから。普段は食べられない、ローストチキンをナイフで切り取り口に含む。
――またしても口の中に広がり、ゆっくりとはじけていく衝撃。
「私の憎むべき人たちは、いつもこんなのを食べているの!?」
 これはその人からのおこぼれなのかしら……と一人つぶやいていた。


 食事の時間はあっという間に過ぎ、お腹が落ち着いてくる頃合いになった。
 ランプに灯った火が消えるまで、時間もあとわずか。夕食と共にそのランプは運ばれ、その火が消えるとともに1日が終わる。
――少女の夜の始まりである。
 そして今日は最後の夜。
 何故だかわからないが、今日は胸騒ぎがする。明日を迎えるにあたって、やはり動揺しているというのだろうか。
 少女がそんな風に思いを巡られていると、扉の向こうに何やら、人の声がした。
(……誰?)
 少女は壁に近づき、聞き耳を立てる。

「……気づかれないよう時間を稼いでおります。……様も速やかに、ご自分のお部屋へお戻りになりますよう」
 何を言っているのか、はっきりとは聞き取れなかったが、誰かがいるのは確かだった。
 しかも一人ではない。
 会話をするという意味。
 しかし、一人はすぐにその場からいなくなった。
 得体のしれない何かが向こう側から来るような気がした。
 しばらく様子をうかがっていると、小窓の下の
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