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もしもこんなチート能力を手に入れたら・・・多分後悔するんじゃね?
第13次海鳴防衛戦
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ふと、上半身に感じる温もりで夢見心地な脳髄が意識というマニュアルをもとに体の感覚を再復旧を始めた。

温もりは上半身の前面と二の腕辺りを通って背中を包むように感じる。同時に既視感も―――こんな温もりをどこかで抱いたことがある、と。
答えはそう時間を掛けず出た。もう既に顔も声もおぼろげになってしまった、桃子お母さんではない本当の血縁者。昔から体が弱かった僕は、何かあるたびこうやって温もりに包まれた。顔を覆う柔らかい感触もほのかに香る女性特有の甘い香りも懐かしい。―――お母さんに抱きしめられたときの温もり。

僕が何歳になっても、お母さんにとってはずっと小さな息子のままだったんだろう。僕がその抱擁に僅かな恥じらいを感じるようになってからも、こうして何度も抱きしめられた。お母さんの体温を肌で感じ、お母さんの匂いを鼻で感じ、お母さんの心音を耳で感じた。

そこでふと気付く。お母さんはもういない筈だ。では、僕は誰に抱擁されているのか。

確か僕はシグナムさんとの一騎打ちに辛勝して、後からやってきたザフィーラさんとシャマルさんという二人に出会い、シャマルさんに「暴れすぎだ」とものすごく怒られて・・・それで、疲れたからシグナムさんの治療をしている合間に居眠りしてしまって・・・それから?


それからは分からない・・・何せ寝ていたのだから。寝たまま現状を把握していたら寝る意味がないだろう。そもそも目を閉じてるから出来ない。ならば眼を開けて現状を確かめる必要があるだろう。
未だラグネルの一撃で痛み、倦怠感に覆われた体を奮起させて瞼を持ち上げる。既に日が沈んだ所為か少々暗かったが、幸い僕は夜目が利くようであり、少々のピント合わせを経て目の前にいる人の顔を目視することに成功した。

僕を抱きしめていたのは―――


「・・・クロエ、くん・・・大、丈夫かし・・・ら・・・?」
「・・・シャマル、さん?」

僕の事を愛おしげに見つめる女性。名前が合っているか自信がないが、確かシャマルさんだった。だが、その額はは脂汗で濡れ、顔色も蒼白。息も絶え絶えでとてもではないが普通の様子には見えない。

「よかった・・・魔力が、もう、残って・・・なかったから。ちゃんと効果があっ・・・て」
「・・・シャマル、さん」

シャマルさんの衣服があちこち破損している。上体を起こすと、シャマルさんはそれ以上動くことが出来ないという風に抱きしめていた腕をほどき、僕の膝の上に落ちた。お腹の辺りにシャマルさんの荒い息遣いを感じる。その背中には、酷い攻撃を何度も受けたように腫れ上がり、うっ血していた。
絶え絶えの声で微笑を浮かべるその顔は、まるで自分よりも僕の方が大切だと言っているようで、僕は少しずつではあるが現状を理解し始めた。シャマルさんの震える指先が僕の頬を撫
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