第百四十六話 闇の仕掛けその一
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第百四十六話 闇の仕掛け
義昭は顕如から送られた文を見てだ、すぐに血相を変えた。
そしてだ、本願寺の使者にこう叫んだ。
「何じゃこれは!」
「何だと言われましても」
「顕如め、余を叱るとな」
「叱ってはおりませぬ」
それは違うとだ、使者も答える。
「お諌めしておられるのです」
「余をか」
「はい、そこにある通りです」
「右大臣の言うことを聞けとな」
義昭はその顕如の文を見てわなわなと震えている、その前には幕臣達が揃っているが彼等は目に入ってはいない。
「そして織田家との争いを唆す文なぞ送るなと」
「何と、上様はその様なことを」
「他の家に送られていたのか」
幕臣達はその話を聞いて呆れ返った。
「何とまあ」
「織田家の世話になりながら」
「それが武門の棟梁の為されることか」
「いや、これは」
「何と言えばよいのか」
だが義昭は彼等は目に入っていないままだ、それでだった。
その怒った顔でだ、本願寺の使者に言うのだ。
「馬鹿を申せ、余は将軍じゃぞ」
「はい」
「その余を坊主が止めよというのか」
「法主であります」
使者は平然として反論した。
「そのことはご承知下さい」
「ふん、わかったわ」
義昭は使者の言葉に憮然として返した。
「それでは法主じゃな」
「そうです」
「御主のところの法主は余を何だと思っておるのじゃ」
「ですから公方様です」
将軍、それに他ならないというのだ。
「そのことはご承知ですので」
「では何故余に言うか」
相変わらず怒った顔で問う。
「右大臣には何もするなと」
「ここは右大臣殿にあれこれされずに」
「大人しくせよというのか」
「文に書かれてある通りです、若し文の通りにされねば」
「何じゃ」
「本願寺はもう幕府に銭を送りませぬ」
つまり援助の一切を止めるというのだ。
「そうします」
「くっ、わかったわ」
幕府は最早銭がなければどうにもならない、それでだった。
義昭も今は苦い顔で頷くしかなかった、それで使者に言うのだ。
「ではな」
「法主の諌言を聞き入れて下さいますか」
「顕如・・・・・・殿が言うのなら仕方がない」
贈られる銭を止められては仕方がなかった、彼にしても。
「ではな」
「それでは」
こう話してそしてであった、義昭は本願寺の使者に対して応えた。そのうえで使者を帰らせた。そしてその後で。
憤懣やるかたないといった顔でだ、こう言うのだった。
「何じゃ、本願寺は」
本願寺、そして顕如への怒りを露にしての言葉だった。
「余の言葉に従わぬばかりか言って来るとは」
「いえ、上様それは」
「顕如殿にもお考えがあります」
幕臣達は義昭に呆れながらも彼に言う
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