第四十八話 薔薇園その十
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「それをもう植えてるなんてね」
「うちの園芸部も凄いわね」
「学校から援助されたのかしら」
生徒の部活動を助けるのも学園の務めの一つだ、このことについて八条学園はかなりのものである。
「それでなのかしら」
「ううん、だったら凄いわね」
「そう思うわ、私も」
「かるた部も結構学校に助けられてるし」
援助を受けているというのだ。
「試合の時代の和服だってね」
「あれも貸してくれるからね」
「やっぱり凄いわよね」
「そうよね」
こう話すのだった、二人で。
そして青薔薇から白薔薇に目をやるとそこにだった、彼女がいたのだった。
茉莉也だ、あの派手な赤と黒の何処かのアイドルを思わせる制服姿で薔薇を見ている。二人はその彼女を見てうわ、という顔になった。
その顔でだ、こう彼女に言うのだった。
「あの、先輩どうして」
「どうしてここにおられるんですか?」
「生徒が通っている学校の中にいるのがおかしいの?」
こう返す茉莉也だった、二人に顔を向けて実に平然とした態度で。
「そんなことはないでしょ」
「それはそうですけれど」
「特に」
二人もこのことには異論はなかった、だが。
その彼女にだ、いぶかしむ顔で言うのだった。
「ただ。先輩と薔薇の組み合わせが」
「何か合わなくて」
「巫女さんのせいか和風のイメージ強いですから」
「薔薇って西洋のイメージがありますから」
「実は薔薇好きなのよ」
茉莉也はにこりと笑って二人にこう答えた、その薔薇達に囲まれて。
「それでなのよ」
「今こうしてですか」
「薔薇を見られてるんですか」
「ええ、そうなのよ」
二人に話しながらだ、そうしてだった。
まるで影の様に二人のところに素早く近寄ってだった、そのうえで。
二人を自分の左右の手でそれぞれ左右に抱き寄せて薔薇のところに戻りそのうえで言うのだった。
「まあここにはお友達もいるし」
「ええと、そのお友達の人は」
「やっぱり」
「そうよ、妖怪というかね」
「妖怪というか?」
「といいますと」
「妖精ね」
それにあたる存在がいるというのだ。
「薔薇の精霊がね」
「何か完全に西洋ですね
「薔薇の精霊って」
「いや、花の精霊は普通にいるわよ」
日本にもだというのだ。
「どんな花にもね」
「菊や桜にもですか」
「いるんですか」
「精霊は万物にいるわよ、神様もね」
「ああ、八百万の神様ですね」
「そういうことですね」
「そうよ、だからね」
薔薇にも精霊がいる、そしてそれは西洋的とかいう問題とはまた違うというのだ。
「特に日本とか西洋の垣根はいらないからね」
「そうなんですね」
「特に」
「そうよ、別にね」
こう言う茉莉也だった。
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