第四十八話 薔薇園その九
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「あの絵は下手とかいうものではなくてだ」
「独特、っていうのね」
「そう言うべきね」
「そうだ、独特だ」
下手ではないそう言うべきだというのだ。
「実にな」
「絵に上手下手はないっていうけれど」
「センスっていうから」
「その人が見たものを描くから」
「じゃあ先輩が見られているものって」
「うむ、ああしたものだ」
フランケンはこう二人に応えた。
「その目に見えている世界はな」
「一体どんな世界かしら」
「ちょっとねえ」
その絵を思い出してまた言う二人だった。
「表現しにくいっていうかね」
「言葉に出すにしてもね」
「世の中そうした絵も多い、そしてだ」
どうかとだ、フランケンは哲学者の様な顔で二人に語る。
「それが芸術だ」
「ピカソとかダリとか?」
「ゴッホやシャガールもそうかしら」
「まさに上手下手ではないのだ」
何を表現しているかが重要だというのだ、このことを語るからこそフランケンは今は哲学者の顔になっているのだ。
そしてその哲学者の顔でだ、彼は二人にさらに言うのだった。
「その辺りも学ぶことだ」
「芸術をなの」
「そうなのね」
「そうだ、では薔薇園に行くといい」
こう言ったのだった。
「そこは誰でもわかる美がある」
「芸術とは違ってお花はなのね」
「誰でもわかるものっていうのね」
「中々難しいのだ、芸術は」
やはり哲学者の顔のままだった、今のフランケンは。
「人が表現する美はな」
「さて、ではだ」
ドラキュラも言う、彼は青空を見て言うのだった。
「麻雀を楽しむか」
「うん、そして夕方は散歩ね」
「そうするとしよう」
狼男とミイラ男がドラキュラの言葉に応える、彼等も彼等で楽しむつもりだった。そして愛実と聖花もだった。
その日の放課後にだった、早速高等部のその薔薇園に向かった、薔薇園に行くとまさに百花繚乱、様々な色の薔薇達が咲いている。
赤に白、黄色に黒に紫。それにだった。
「青い薔薇もあるわね」
「そうね」
聖花は愛実と共に青、とはいっても正確には青紫に近い色の薔薇達を見ながらそのうえで応えたのだった。
「まだ生まれたばかりなのにね」
「青い薔薇ってなかったのよね、確か」
「そうよ、人工的に造られた新種よ」
それが青薔薇だというのだ。
「ブルーローズって言葉があるけれど」
「綺麗な言葉よね」
「けれどね」
それでもだとだ、聖花は緑の刺の中に咲き誇るその青薔薇達に愛実と共に近寄りながら彼女に対して言うのだった。
「この言葉ってこの世にないものって意味なのよ」
「青薔薇がなの」
「そう、薔薇には元々青い色素を抑制するものがあるのよ」
これはチューリップもだ、だからこの花にも青いものはなかったのだ。
「だからそ
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