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ヘタリア大帝国
TURN109 モスクワ攻防戦その十一
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「よいな」
「それでは同志閣下がです」
 艦長の一人が彼に言って来た。
「まずは」
「撤退しろというのか」
「同志閣下の乗艦ソビエトは最早」
 見ればかなりのダメージを受けている、大破と言ってもいい。
 そのソビエトを見てだ、その艦長は言うのだ。
「ですから今すぐにです」
「いや、私はだ」
 ジューコフはこう艦長に返す、顔はこれまで通り謹厳なものだ。
「指揮官だ、だから最後の最後まで残る」
「しかしそれでは」
「ソビエト軍の軍律にあるな、指揮官は最後まで指揮にあたれと」
「それはそうですが」
「軍律は守らなくてはならない」
 絶対にだというのだ。
「だからだ、私は最後の最後まで残る」
「ですか、それでは」
「そうだ、撤退しろ」
 こう言ってそしてだった、ジューコフは彼等を撤退させたのだった。
 まずはダメージの大きい艦艇から戦場を離脱し徐々にダメージの軽い艦になっていく、そして無傷の艦も戦場を離脱していく、それを見てだった。
 東郷は唸る様にこう秋山に言った。
「見事な後詰だな」
「はい、そうですね」
 秋山も東郷の言葉に頷く。
「撤退戦の模範の様です」
「これだけ見事な撤退は見られない」
「そうですね、ジューコフ元帥ならではです」
「ソビエトきっての名将だけはある」
 東郷はこうまで言った。
「隙もない」
「最後の最後で攻めあぐねることになりましたね」
「ああ、ここは下手に手出しは出来ない」
 攻められないというのだ。
「このまま行かせるか」
「そうされますか」
「間合いはこのままで砲撃は続けるがな」
 それでは決め手に欠ける、しかしそれでも今の枢軸軍にはこれしかなかった。
 枢軸軍は攻めきれないままソビエト軍の撤退を許す、そしてだった。
 ソビエト軍は遂に撤退を終えた、最後にジューコフの乗艦であるソビエトも。
 戦場を離脱していく、彼はこのままロシア平原に逃れるかと思われた。
 しかし急にエンジンが停まった、それを見てだった。
 ジューコフは無念の顔になりソビエトの艦長に問うた。
「エンジンに異常だな」
「はい、これまでのダメージの影響で」
 艦長も苦い顔で答える。
「これ以上は」
「そうか」
「そして脱出用の小型艇もです」 
 本来ならば充分にある筈のこれもだというのだ。
「これまでの戦闘で全て」
「破壊されているか」
「艦の爆発の心配はありませんが」
 エンジンが停止し脱出出来ないだけだった、しかしそれは。
「これでは」
「ではだ」
 ジューコフは艦長の報告を聞いてこう述べた。
「最早致し方ない」
「それではですね」
「降伏だ、このままでは攻撃を受けて総員無駄死にするだけだ」
 そうなるからだった、これは戦場においては容易にそうな
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