TURN109 モスクワ攻防戦その四
[8]前話 [2]次話
「それは」
「決まっていることです」
これがジューコフの返答だった。
「ですから」
「そうですか」
「ご安心下さい、後任はいます」
「コンドラチェンコ提督ですか」
「彼がいます」
「確かにあの人も優秀ですが」
だがそれでもだとだ、ベラルーシは言うのだった。
「元帥程の方はおられません」
「有り難きお言葉です」
「私が書記長にお話しましょうか」
「定年の先送りですか」
「減衰はソビエト軍に必要な方です」
だからだというのだ。
「ここは是非」
「いえ、法律は法律です」
謹厳なジューコフは軍人らしくこう言うだけだった。
「ですから」
「そうですか」
「私は家族もいません」
ジューコフは独身だ、妻子もいない。
「ですからラーゲリに入っても大して変わりません」
「だからですか」
「はい、私はラーゲリで余生を送ります」
そうするというのだ。
「それだけです」
「では」
「まずはこのモスクワで勝利を収めましょう」
そしてだというのだ。
「戦争にも勝ちましょう」
「では」
「これより全軍で枢軸軍に向かいます」
ジューコフは作戦も命じた。
「では今から」
「パイプオルガンですね」
リトアニアがモニターに出て来てジューコフに問う。
「それをするんですね」
「はい、それです」
ソビエト軍伝統のこの戦術を今回も行うというのだ。
「これまでは破られてきましたが」
「今回はどうするんですか?」
「今回は数が違うので」
それでだというのだ。
「攻撃範囲をこれまで以上に広くして」
「敵が逃げられないだけの広範囲で攻めるんですね」
「はい、そうします」
「確かに、この数ですと」
リトアニアは自身の乗艦のコンピューターで艦隊の数と布陣をチェックした、そのうえでこう言ったのである。
「パイプオルガンもかなり広範囲になりますね」
「だからです」
「そうですか、この数で攻めて」
「これならば勝てます」
ジューコフは言った。
「ソビエト軍の艦艇は射程を定めての攻撃は苦手ですが」
「広範囲の攻撃は得意だからですね」
「数をこれまで以上に揃え広範囲攻撃を仕掛けます」
これがジューコフのパイプオルガンの改良だった。
「そうしましょう」
「では」
「今より枢軸軍を攻撃射程に入れます」
そしてだというのだ。
「戦いに向かいましょう」
「了解です」
「それでは」
リトアニアとベラルーシが応えた、そしてだった。
ソビエト軍はその大軍を前に動かす、その彼等を見て。
東郷はまずはこう言った。
「さて、来たな」
「どうされますか」
「敵はパイプオルガンで来る」
それはもうわかっている、東郷は秋山に答える。
[8]前話 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ