第二十五話 〜Mother&Children or Family【暁 Ver】
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時計?』
「ええ。……私を便利屋か何かと勘違いしている方がいまして。修理を頼まれました」
桐生はボブと会話を交わしながらも手元から顔を上げない。接眼鏡を掛けながら作業をする姿は雑多な工房の雰囲気と相まって、デバイスマイスターと言うよりも時計職人と言った風情であった。
『断ればいいじゃないか』
「そうもいきません。これが縁で新たな顧客が獲得出来る可能性もありますしね。必要労働ですよ」
『フリーのデバイスマイスターというのも大変だな』
まるで人ごとのように言うボブに、桐生は苦笑いを零す。皮肉も多分に含まれてはいるが。
「あなたは、どうしてこんな感じに育ってしまったんでしょうか」
『アスナの御蔭だ』
「アスナの所為ですね」
桐生はそう言って接眼レンズを額に上げると、椅子の背もたれへ体を預ける。ぼんやりとした瞳は煤けた工房の天井を見上げていた。聖王協会、騎士カリム。今度は、クロノ・ハラオウン提督にヴェロッサ・アコース査察官。どうも、我が妹は自分と違って、偉い人との縁があるらしい。
「……まぁ、いいことなのでしょうね。きっと」
義母と養父を亡くしてから家族以外には決して、心を開かなかった桐生アスナと言う名の少女。それが、今や最前線で仲間と一緒に仕事をしている事実を、桐生は驚くと同時に──── 喜びを感じていた。それを成し遂げたのは間違いなく、あの二人なのだ。
「ティアナさんと、スバルさんには頭が上がりませんね」
『大きな力には、大きな責任が伴う』。現代日本で言えば、銃器の類いがそうだろうか。所持するには資格が必要で、目的以外で使用すれば罪に問われる。『力』は子供の玩具ではないのだから。だから、桐生は──── この『世界』へ来た時に、アスナを助ける時以外は『力』を使わないと決めたのだ。現に、そんな力は一人の少女を変えることすら出来なかった事が証明された。それを、ティアナとスバルはやったのだ。天の岩戸をこじ開けるように。
──── いつか、借りを返せるといいんですが。いや、お礼ですかね
『桐生。アスナに伝えることはあるかい?』
「いえ、特には。あ、そうそう」
『どうかしたかい?』
「アスナがクロノ・ハラオウン提督や、ヴェロッサ・アコース査察官と知り合いになれば、新規の顧客を紹介」
『それじゃ』
「最近、冷たいですね。みんな」
そう呟いた桐生の顔は。言葉とは裏腹に楽しそうに──── 笑っていた。
本局へと出向いたあたし達は、クラウディアへ行くため転送ルームへと向かっていた。どこか機械的で冷たい印象のある長い廊下に、靴底が床を叩く音だけが響いている。……アスナが、制服を着崩していないのは新鮮だ。少し窮屈そうな
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