第二十五話 〜Mother&Children or Family【暁 Ver】
[3/13]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
いた。彼女の服装は見慣れた黒のタンクトップに、グレーカーキのカーゴパンツ。無骨な編上げブーツが、少々不釣り合いのような気もするが、彼女にはよく似合っていた。彼女の姿を見ようと、雲から太陽が顔を出した瞬間──── 彼女は踊る。
シグナムが、一人寡黙に剣を振る姿が『剣舞』だとするならば──── 桐生アスナの姿は『拳舞』だ。その姿は決して洗練されているわけではなく。見る人を虜にするような演舞でもない。無骨で力強く。ただ、愚直なまでに高みを目指していた。観客は太陽と雲。大勢の向日葵。そして────
中庭に設置されたベンチには高町なのはと、フェイト・T・ハラオウンの姿があった。なのはの膝にはヴィヴィオが座っており、子供らしい素直な言葉と黄色い歓声を上げている。今の彼女は見窄らしい布きれ一枚の姿でも簡素な病院着でもなく、白いワンピース姿であった。恐らく、なのはかフェイトが買い与えたものであろう。
<ねぇ、フェイトちゃんなら、どう戦うかな>
<あまり、考えたくないけど……アスナのスタイルなら間合いには入らず、距離を取りながら魔法による攻撃が定石だけど……>
<うん、わたしなんかが特にそう。だけど>
<アスナには、それが使えない。魔法はキャンセルされるし、距離をとってもあれがあるから>
<強化とマジックキャンセルが付加された投擲。しかも、300キロ近くのスピードで飛んでくる……実は凄く厄介なんだよね>
<私のスピードなら躱すことは簡単だけど……>
念話の内容が些か物騒ではあるが、やはり二人とも魔導師なのだ。今は人を育てる立場であるが、二人とも魔導師としての本分を決して忘れてはいない。そんな念話が交わされているとは夢にも思っていない当の本人は、なのはの膝に座りながら手を振っている小さな少女を視界に収めると、唐突に動きを止める。そして再度動き出した時には雰囲気が一変していた。
「わぁ。おさるさんだぁ」
一転して、コミカルな動き。手足を使い走りまわったかと思えば、毛繕いをする仕草。
「なんか、映画で観たことあるね」
「猿拳、かな。わたしも詳しくないけど」
相手を油断させるようなコミカルな動きの合間に、鋭く撃ち出される拳と蹴?。トリッキーな動きで虚をつき、敵を倒す技。だが、形意拳の一つであるそれをアスナが実戦で使った事は無い。それを敢えて使うメリットを見いだせなかったからだ。しかし、今は関係ない。今は……一人の少女を笑わせるために。
──── ティアナ・ランスター二等陸士。及び、アスナ・桐生三等陸士は至急部隊長室まで────
唐突に中庭へ流れた呼び出しアナウンスにアスナは動きを止める。少々不機嫌そうだ。だがこのアナウンスがアスナに新たな出会いを
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ