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蒼き夢の果てに
第5章 契約
第78話 生きている炎
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しかし――――
 しかし、一体の炎もたらすモノが浄化された瞬間、先ほど燃え上がった立木から、今も燃え続けて居る枯草からも、ゆらゆらと浮かび上がって来る蒼白い光。
 これは……。

「成るほど、ヤツらは有りとあらゆる物を自らの糧として増殖して行くのか」

 ここで一体や二体を浄化したトコロで正に焼石に水。
 この場に居る三人が簡単に精気を奪われるとは思いませんが、一般人ならば一気に精気を奪われて死亡させられるのは間違いない相手。
 正に、忌まわしい書物が伝える通りの吸精鬼と言うトコロですか。

(では、私はあちら側に)

 ひとつ首肯いた後、最初にシャルがそう口にしてから、右手を振り抜く。
 その瞬間に発生した光に包まれた炎もたらすモノが苦しげに揺れ動き、やがて、ふぅっと消えて仕舞う。

 攪乱と、召喚円が完成する事を遅らせる為の目的でここに降りて来たのですから、彼女のこの判断で問題ない。
 但し、

「シャル、無理はするな」

 彼女の向かう方向は召喚円の外周部。先ほどクトゥグァの触手が顕われた場所では有りません。おそらく、俺の記憶に有る彼女の通りの能力を、今の彼女が持って居るのならば炎もたらすモノ程度なら危険度は低いと思います。
 しかし、それでも、ここは戦場で、そして相手は謎の部分が多いクトゥルフの邪神ですから、警戒し過ぎると言う事はないでしょう。

(大丈夫ですよ、ダイ。私は自分の能力は理解している心算ですから)

 灼熱の火焔に包まれた場所に相応しくない、爽やかな風の如き微笑みを見せるオルニス族の少女シャル。
 いや、より正確に表現するのなら、生死の境を彷徨う事に因りオルニス族の少女シャルの記憶を蘇らせたハルケギニア世界の翼人の少女なのでしょう。

(それよりも、何時も無茶な事をするのはダイ、あなたの方だったと私は記憶しているのですが)

 そう俺に話し掛けながら、更に右手を一閃。
 彼女の右手から放たれた霊力。その聖なる光に包まれた燃え盛る倒木から、今、まさに生まれ出でようとした炎もたらすモノが消え去る。

 その時、シャルの言葉に、俺の心の片隅で静かに首肯く少女が一人。
 その二人に対して、僅かな微苦笑のみで答える俺。

 そして、

「それでは、私はあちらの方へ」

 彼女、アリアはシャルとは反対の方向に向かい進み始める。但し、同時に彼女からは何故か、ほんの僅かの不満に似た気が発せられた。
 その彼女が振るった右手から放たれた円月輪(チャクラム)が、彼女に相応しい蒼銀色の光を発し、自らの分身を作り出しながら接近しつつ有った炎もたらすモノを浄化して仕舞う。

 成るほど。矢張り彼女は、自らが一番危険な場所に向かいたかったと言う事なのでしょう。
 思考は先ほど
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