第5章 契約
第78話 生きている炎
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能が有ったとしても、初見の相手と息を合わせて魔法を行使するのは難しい物ですから。
おそらく彼女は、俺の身を案じたと言うよりは合理的に判断した結果、自分の行動として相応しい行動を選んだに過ぎないのでしょう。
それならば、
この自由落下に等しい時間の間に、アリアとシャルに対して、物理反射と魔法反射の仙術を行使して置く。
これで、たった一度だけとは言え、例え星を燃やし尽くすクトゥグァの炎で有ったとしても無効化する事は可能。
但し、二度目は存在していないのですが。
そして大量の炎が巻き起こす上昇気流に逆らうように降りて行った先には……。
倒木が、枯葉や枯れ枝に覆われた大地が、赤い絨毯の如き炎に因って覆われて行く。
いや、それだけではない。倒木を燃やしていた炎が、其処から更に近くに有った木……未だ生きて居る立木を燃やし始めて居た。
轟と音を放つかのような勢いでその立木を包み込んだ炎が、そのままの勢いを保って左右に存在する他の木へとその紅い支配領域を広げて行く。
秋の乾いた空気と、冬に向かい葉を落とした落葉広葉樹が主体の森で有った事が災いしたのか、炎の広がりが予想以上に早いように思われた。
正に業火に焼き尽くされる灼熱の地獄。精霊の護りを持たない生命では五分と生きて行く事は不可能と思われる世界。
その炎。何故かすべてを燃やし尽くす炎のはずなのに、瘴気漂う世界の中に……。
ふぅんぐるいぃぃぃ む、む、むぐるぅぅうなふ く、く、くと、くとぅぐぁ
ゆらゆらと揺れるように漂う蒼白い光。
大きさは大体、バスケットボール大。但し、バスケットボールとの違いは、その球体から時々走る蒼白い火花。
日本の怪談物に付き物の火の玉と言うよりは、西洋の伝承の中に存在するウィル・オ・ウィプスと呼ばれる魔物に近い姿形。
おそらくは、科学的には球電現象と呼ばれる存在なのでしょう。
そして、その光が右に揺れる度に、右側に立つ樹木が。
左に揺れた瞬間には、左側に存在した枯れた下草が燃え上がる。
ふぉ、ふぉ、ふぉまぁるはうと んが、んがあぐあ なふるたぐん いあ! くとぅぐあ!
その蒼白い光が揺れる度に。立木が、倒木が、枯葉枯草が燃える度に聞こえて来る異世界の歌声。
そう、炎の邪神を讃えるその眷属たちの歌。
「俺は上空から見えた召喚円の中心に向かう。アリアとシャルは広がって行く炎を出来る限り阻止して時間を稼いでくれ」
共に降下して来た戦友に依頼を行い、同時に右手を一閃。
その瞬間、目の前にまで接近して来ていた炎もたらすモノがケルトの至宝が放つ光輝にて両断され、一瞬の眩いまでの光を発した後に静かに消えて仕舞った。
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