第5章 契約
第78話 生きている炎
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侯爵夫人が、自らの操る騎竜の上より問い掛けて来る。その声には多少の焦りのような物を感じはしますが、少なくとも俺がアリアに語った内容について疑って居るような気配を感じる事は有りません。
成るほど。おそらくはアリアや、その他の色々な方向から俺の情報は集めて居て、少なくとも信用に足らない人物と言う情報は得ていないようです。
更に、元々はガリア王家に繋がる家柄からマジャール侯爵家に嫁いで来た貴族の令嬢だったはずの彼女ですが、流石は騎竜を操る家系に入った人間。見事に竜を自らの手足の如く操って居ます。
「あの召喚円を描いている存在に通用する可能性が有るのは浄化。それ以外は冷気だろうが、水気だろうが、それらはすべて熱を持って居る以上、通用する可能性は薄い」
俺は、有りとあらゆる物すべてを燃やし尽くす勢いでその領域を広げて行く炎を見つめながら、そう言った。
そう。炎もたらすモノと呼ばれる存在に関する伝承では、ヤツは吸血鬼で有る、と言う風に記されています。
但し、その記述をつぶさに検証すると、ヤツラは生物の血液を吸い取ると言うタイプの吸血鬼などではなく、相手の生命力や霊気をすべて吸収するタイプの吸精鬼と表現すべき存在。
まして、クトゥグァの息子と呼ばれる冷たき炎アフーム=ザーは絶対零度の冷気を纏うと言われる存在。つまり、クトゥグァの眷属に関しては、単純に冷気を苦手とする炎の化身ではない、と言う事だと推測出来ます。
「成るほど。浄魔タイプの魔法ならば効果が有ると言う事か」
突然、今までに聞き覚えのない声。落ち着いた男性の声が掛けられた。
その声が掛けられた方向。其処には何時の間にこちらに合流していたのか、一人の青年の操る騎竜がマジャール侯爵夫人の操る騎竜の隣に並んで滞空していた。
その青年。髪の毛は黒髪。瞳も黒。貴族にありがちな髭はなし。彫は深いが、それでも西洋人の基本形とは明らかに違う東洋風の顔立ち。黒い胸甲と黒の鉄甲と言う軽装。その右手に携えているのも、他の騎竜兵と同じ槍。
見た目から言うのなら、三国時代の趙子龍がハルケギニアに顕われたような人物と表現すべきですか。
しかし、俺にはこの人物に関しても見覚えが有ります。
それは、あの紅い光に染まったタバサの夢の世界で双子の姉弟の両親としてソファーに座り、革製の表紙の書籍に静かに目を通して居た青年貴族その人でしたから。
何故、マジャール侯爵夫妻がタバサの夢に登場して居たのか理由は不明ですが、このふたりの並ぶ雰囲気から、何となく彼女の求めて居る父親像と母親像は想像が付くような気もして来ますか。
「あの地上に描かれつつある召喚円が完全に完成する前に一気に浄化する。但し、それまでヤツらの好き勝手にさせる訳には行きません」
先ほど、騎士
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