第5章 契約
第78話 生きている炎
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目指して――――
いや、違う。それは既に一振りなどではなかった。不規則に揺れる度、優美な弧を描く度にその数を増やして行くバルザイの偃月刀。
その数は、正に全天を覆うが如し。
それぞれが、ナナシの青年に相応しい……熾火の如き昏い光を放ちながら、巨大な蜘蛛の巣のように急速に広がって行く。
対して、俺の方は徒手空拳。風に乗りて歩むモノに向けて放った聖槍……如意宝珠は未だ戻らず。
しかし!
少し立ち位置を後ろに移し、俺の右隣に並ぶ龍の戦姫。
そして、共に抜き打ちの形に構える姿は正に鏡に映る自らの構えを見るが如き。
彼女の右手には七星の宝刀が。
そして俺の右手には――――
いや、ここも違う!
何故か、その右手の周囲から溢れ出す光輝。徒手空拳のはずの右手の先に霊気が集まって行くのだ。
そう、如意宝珠とはその所有者の心の中に共に有る宝貝。
そして、現在の俺の心の中には、タバサの精神体が存在している。
そのタバサの心の中には、湖の乙女から託された如意宝珠の『希』が存在して居る。
但し、先ほど全力で運命の槍を放った以上、今回の隔てられぬ光輝には全力で霊力を注ぎ込む事は出来ない。
更に、今回は湖の乙女がいない。故に、如何に神話上で勝利をもたらせる、と言う属性を有していたとしても、完全な勝利を得るのは難しいかも知れない。
しかし!
集束は一瞬。呼吸から、そして、周囲から有りとあらゆる種類の精気を取り入れ、それを丹田にて自らに扱える龍気へと練り上げる。
俺とアリアを中心にして高まって行く龍気に世界が歪み、その歪みに向かい周囲より大気が流れ込んで来る。
この時、またもや俺の周囲は龍の気に溢れた異界……。一種の龍泉郷と化して居た。
「勝利をもたらせ――――」
ゆっくりと。しかし、現実の時間に換算するのなら刹那の瞬間に右手を脇構えの位置に。
沸騰しそうな程に熱を帯びた血液が身体中を巡り、右手に宿った暴走寸前の龍の気を、タバサが辛うじて制御しているのを感じる。
最早、臨界点まで高められた光輝は、放たれるその瞬間を待つのみ。
そして!
「隔てられぬ光輝!」
希望を意味する如意宝珠に因り作り上げられたケルトの至宝が振り抜かれた瞬間。俺の右隣に並ぶ龍の戦姫が一際強く輝く。
その時の彼女の動きもまた、鏡に映りし俺の動き。
二人分の龍気の高まりに因って出来上がった世界の歪みに向かって流れ込む大気が、彼女の纏いし魔術師の証をはためかせている。
そう、圧倒的な力が彼女の構える宝刀に集まって行くのが見えた。それは、空間の揺ら
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