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蒼き夢の果てに
第5章 契約
第78話 生きている炎
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運命の槍(スピア・オブ・ディスティニー)!」

 紡がれる禍言(ことば)

 その瞬間!
 俺の掲げられた右腕の先で猛烈な光を放って居たその霊気の塊が、明確な意志の元にある一点を目指し飛翔を開始する。
 人類すべての原罪を背負いゴルゴダの丘に死せる神の子を貫きし槍。伝説に語り継がれし鍛冶の祖が、星に因り鍛え上げたとする古の書も存在する聖なる槍。

 高度約三百メートルの地点から発生したその光輝(ひかり)は、そのまま一筋の流星と化し、遙か上空。紅く燃え上がるような光を放つ双星へと――――

 しかし!

 紅き双星と(タバサ)の間に立ち塞がるひとつの影。
 振るわれる右腕。その右腕が纏う黒き闇。
 濃密な死と妖の気配。運命の槍が放つ光輝とはまったく逆の存在で有りながら、その放つ雰囲気は等価。
 まるで光を食す闇の如く、ゆっくりと広がりながら――――

 そして、黒き闇と、蒼き流星に等しき光輝の激突!

 持つ者に力を与え、世界を統べるとさえ言われる聖なる槍と、すべての存在を貪り喰らおうとするかのような黒き闇。その互いの顎が……。貫こうとする霊力と、貪り喰らおうとする呪力の拮抗する瞬間――――
 突然、黒き影。自らの事を名付けざられし存在だと自称している青年の右腕が撥ね上げられる。

 その瞬間、音さえ途絶え……。いや、その音を伝えるべき大気さえ、其処の空間には存在して居なかった。

 そう。運命の槍が纏う俺の霊気と、ヤツの纏う妖気が互いに干渉し合って出来上がった空間の歪みが方向を変え、
 猛烈な勢いで渦を巻き、すべての存在……。大気さえも巻き込みながら其の力の行く先を示す。
 真っ直ぐに――――遙か蒼穹(そら)の彼方へと。
 異界……狂った異世界の蒼穹と、正常な黎明の蒼穹に、黒と蒼光の二重螺旋を描きながら……。

 そして……。
 そして、一瞬後にその場に存在して居たのは……。

「流石に、これ以上、俺の眷属を失う訳には行かないからな!」

 そう叫びながら、残った方の腕。流石に伝説にその名を残せし聖槍の一撃を受け止めて無傷と言う訳には行かなかったのか、肩の付け根の部分から先を完全に失ったナナシの青年が残った方の腕。無造作に左腕を振るった。
 その時、彼の右腕の有ったはずの箇所から、血液とも、もしくはそれ以外の何かとも付かない液体が、渦を巻いて黎明の蒼穹へと散じて行く。

 その瞬間、徒手空拳。直前までは何も持って居なかったはずのその左手に現れるバルザイの偃月刀。その際に何らかの魔術が行使されたような気配が発せられた以上、これは一種の鍛造魔術(たんぞうまじゅつ)

 ヤツの手を放れたその殺意と破壊を象徴する一振りの偃月刀は、複雑な軌道を描きながら、(タバサ)
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