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樹界の王
2話 ヒガンバナ
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物にお礼を言ったことなど、今まで一度もなかった。植物は言葉を解さないし、感謝を欲している訳ではない。植物と人間は根本的に違う。植物の心がわかる故に、ボクは一般的に植物好きな人たちが行う対話というものをした事がなかった。植物を擬人化するという行為は、人間の傲慢さがもたらすものだ。決して褒められるものではない。ずっと、そう思っていた。
 しかし、目の前のトゲトゲの植物は、確かにボクの言葉に応えていた。
 ボクはじっとトゲトゲの城壁を見つめた後、そっと周囲の植物の葉をちぎった。
「ごめんね」
 謝って、葉裏に目印の数字を描いて、閉じたトゲトゲ植物の前に置く。
 今はとりあえず、進まなければならなかった。
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