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樹界の王
プロローグ
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 かんかんかん。
 すぐそばから踏み切りの警報が鳴っている。
 ボクは見知らぬ線路の前で呆然と立ち尽くしていた。
 かんかんかん。
 出て行け、と警告されている気がした。
 ボクは踵を返して、走り出す。
 かんかんかん。
 知らない場所だった、どこかの田舎道。
 どうしてここにいるのか、わからない。ずっとキャンプをしていたはずだった。けれど、さっきまでいたキャンプ場は、どこにも見当たらない。
 赤く染まった空。木々の向こうに見える鉄塔。全て、見覚えがない。
 かんかんかん。
 振り返ると、遮断機が下りるのが見えた。
 そうだ。踏切が閉まったということは電車がくるということ。人がいるはず。ボクは足を止めて、線路を見つめる。
 赤く染まった世界の向こう。電車の光が見えた。
 がたんがたん。
 電車の近づいてくる音に紛れて、カラスの鳴き声が頭上から響いた。
 轟、と強い風音が耳朶を叩き、電車がボクの目の前を通り過ぎる。
 踏み切りの横で、赤いランプがひっきりなしに明滅していた。それは恐らく警告で、でもぼくは通り過ぎる電車を呆然と見つめたまま動けなかった。
 電車には、人が乗っていなかった。車掌さんも、お客さんも、誰もいないまま、ボクの前を通り過ぎていく。
 幽霊電車。そんな単語がボクの頭に浮かんだ。
 電車が通り過ぎて、遮断機がゆっくりと上がる。そして後にはボクだけが取り残された。
 怖くなって、辺りを見渡す。どこまでも続く山道。民家はどこにも見当たらない。
「由香?」
 一緒にキャンプに来ていた少女の名前を呼ぶ。こっそりと抜け出し、一緒に辺りの散策に出かけた少女。
 さっきまで川沿いの道を由香と一緒に歩いていたはずだった。それが、いつの間にか踏み切りの前に立っていて、由香の姿は煙のように消えている。
 状況が、よくわからない。
 ついさっきまで、すぐ隣に由香がいたはずだった。そう、川沿いを確かに歩いていた。踏み切りなんてどこにもなかった。電車が走るような場所ではなかった。
 漠然とした焦燥感が胸の奥から湧き出し、ボクはいてもたってもいられなくなって駆け出した。
 開いたばかりの踏み切りを抜けて、見知らぬ道を走る。
 かんかんかん。
 後ろで再び踏み切りの警報が鳴る。
 かんかんかん。
 ボクを引き止めるように、警告するように。
 かんかんかん。
 警報が不自然なほどの速さで遠のいていく。
 警報だけではない。全ての音が遠ざかっていく。
 ぐうん、と全てが間延びするような感覚。
 視界も、聴覚も、全てが停滞するように静かに失われていく。
 目眩がした。世界中がおもちゃ箱をひっくり返したように逆さまになる。
 地
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