雪原の戦闘
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な事よりも、やるべき事があります。ここで何をされていたのですか?」
ラインハルトは不満げな顔を浮かべたが、穏やかに尋ねるキルヒアイスを無視することも出来ず、装甲車を見上げた。
それは帝国軍の型とは違う、同盟軍から鹵獲したものだ。
だが、認証システムのために動かす事が出来ないでいる。
これを動かす事が出来れば、兵を偽装することだってできる。
そう思い立ってきたのは良いが、いまだ帝国の整備兵が誰も解析できない現状であれば、簡単には動かせそうもなかった。
そう伝えれば、さすがですといって、キルヒアイスは残念そうな顔を浮かべた。
「残存するデータは以前の基地のもの。せめて、動くと良かったのですが」
「帝国の整備兵がそこまで無能とは思いたくないな。それに収穫がなかったわけではない」
「何です?」
「装甲車の基本構想こそ違いはあるが、一部システムに一致が見られた。それには認証システムも含まれている。どちらもフェザーンのアース社製だ」
「大企業ですね。工事用の車両や惑星開発用機材を主に手掛けていると聞きます」
「表向きはな。裏から軍からも受注を受けて、作っている聞く――そこに装甲車のシステムで偶然の一致があったわけだ。帝国の装甲車を調べれば、同盟の装甲車も無効にできるかもしれない」
「さすがですね」
「褒めるのは、成功してからだな」
「ええ」
頷いたキルヒアイスに、ラインハルトは再び装甲車を見上げた。
鋼鉄の塊が狭い整備室に鎮座している。
何も任務を与えられず、ただ時間だけが過ぎていく姿に、ラインハルトは自分のようだと思った。
「行こうか、キルヒアイス。ここは少し冷える」
「はい、ラインハルト様」
従うキルヒアイスを伴って、ラインハルトは歩きだした。
ラインハルトは待たない。
鹵獲された装甲車のように、用がなくなったとただ朽ち果てることなど彼には許されてはいない。
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