雪原の戦闘
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それを小さく手でもて遊べば、不愉快そうにシャワー室の扉を開いた。
目隠しもなく、固定式のシャワーが横に並んでいる簡素な部屋だ。
湯気のところ室内に入り、無造作に蛇口をひねれば、熱い湯がシャワーから飛び出した。
「随分と荒れているようだな。伍長」
「あ……? 軍曹」
眉間にしわを寄せて見れば、それが遥か年上の上官であった事に気づく。
慌てたように敬礼を行えば、カッセルは苦笑を浮かべた。
「手を頭に持っていくよりも、先に隠すものがあるだろ」
「し、失礼しました」
「よいさ」
小さく笑い、バセットの隣に立って、カッセルも蛇口をひねった。
湯が噴き出す音と水が排水溝へと流れる音がする。
しばらく二人は無言で髪を洗えば、カッセルが口を開いた。
「荒れている原因はマクワイルド少尉かな」
「言わなくてもわかるでしょう」
「ふむ。それは期待のし過ぎだな。誰もが自分と同じように思っていると思いこむのは危険だぞ?」
壁面に備え付けられた鏡で、自らの顔を映してカッセルは呟いた。
取り出したのは、T字型のカミソリだ。
カッセルが髭を整える様子を、鏡越しに見ながら、バセットは息を吐いた。
「あの訓練に何の意味があるのです。ただ遊んでいるだけにしか見えません。馬鹿な兵士はその方が嬉しそうですがね――人気取りのつもりですか」
「そうかな」
カッセルの否定の言葉に、バセットは眉をひそめる。
しかし、そんな様子を気にした様子もなく、カッセルは丁寧に髭を整えていく。
「人気取りなら訓練自体させないだろう。伍長からすれば遊びかも知れんが、部下達は雪原での行動に少しずつは慣れてきている気がするがね」
「あれだけ外で走りまわれば、馬鹿でもなれるでしょう」
「それだけでも訓練の成果はあったと思うがね。それとも伍長は一日目のように雪に足を取られて、突撃中にこける部下を持ちたいか?」
「雪原での行動など基本中の基本です」
「それが出来ないから特務小隊なのだろう」
カッセルはかかと笑い、バセットは憮然と口を尖らせた。
分が悪いと思う。
「では、午後の整備はどうです」
「整備がどうかしたかな」
「少尉は装甲車の脳波システムについて、随分と御執心の様子。今更、緊急時には手動に切り替えられないかといわれて、整備兵が随分と困ってました」
「ああ。脳波による認証だったかな」
「それを手動に切り替えられるようなら、何のための認証なのです。上にまで改善要望を出したそうです、あっさりと断られたそうですが。まったくそれに何の意味があるのですか」
「さてな。上の考えることは私らにはわからんよ」
「そこです」
シャワーの蛇口を閉めて、バセットが苛立ったように呟いた。
「上の考えとやら
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