雪原の戦闘
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けるって事を忘れるなよ、爺さん」
「そりゃますます勘弁じゃな。わかった、今度少し話をしておこう」
大きく笑う様子に、アレスは小さく苦笑した。
特務小隊に与えられた任務は、主として訓練活動であった。
攻撃を任せるにも、守備を任せるにも不安がある。
そのため時間を稼ぐためにも訓練を主体として、雑用の任務が与えられた。
こうして午前中は雪合戦を、午後は車両の整備が彼らの日課だ。
雪合戦をしながらも、アレスはそれぞれの特徴を頭に入れていた。
カッセル本人は不適格者の集団と言葉にしていたが、訓練が始まって一カ月ばかりの様子を見れば、決してそれだけではない。
第二分隊を預かるバセット伍長は確かに頭が少し足りないところはあるが、戦闘能力自体は優れている。突撃のタイミングや動きなど、一流と呼んでも差し支え使えない。
相手がカッセルでなければ、おそらくは今回の突撃も上手くいっていたはず。
他にも何人か。
やる気がないなどの性格的欠点がなければ、兵士としては十分過ぎる。
いや。
眉を細めてカッセルを見れば、首を傾げて、こちらを見る。
「ほっほっ、何かな」
この爺さんに至っては、単に兵士だけにおいておくのはもったいない。
相手の行動を上手く読み、冷静に目的のものを見極める。
口も達者だ。
参謀としても十分活躍できただろう。
そう考えれば、もっとやる気になれよと思わなくもないが、もはや退役寸前の老兵にそれを求めるのは今更の話であった。
「しっかり後輩に教えておいてくれ。じゃ、全員風呂に入って、午後から車両の整備だ。風邪をひかないようにな」
手を振って、アレスは感覚のなくなり始めた手をポケットに入れて、歩く。
そんな背中をカッセルは小さく笑い、振り返った。
「よし。全員三分で撤収だ。遅れるなよ、凍死しても放って戻るぞ?」
+ + +
基地内に設けられたシャワールーム。
「エリートさんだから厳しいかと思ったが、案外そんなことはないな」
「毎日が雪合戦だけどな」
「同じ雪に埋まるなら見張りでじっとしているよりはましさ」
「そら、そうだ」
一斉に起こる笑い声。
一時の休息の和やかな雰囲気をかき消したのは、バセットの怒声であった。
「何分浴びてるつもりだ」
苛立たしげな声に、雑談していた兵士達が慌てたように素っ裸で外に飛び出した。タオルで体を十分に拭かず、軍制服に身を包む。濡れた髪から水滴を垂らしたままで、男達は慌てたように敬礼をした。
「失礼しました。伍長!」
「ああ。風邪をひかないように、乾かしておけ」
それだけを兵士達に告げれば、バセットも服を脱いだ。
引き締まった筋肉を露わにして、首元には認識票が二つ下がる。
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