第二十四話 〜彼女たちのお話 -スバル・ナカジマの章-【暁 Ver】
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けた。
「綺麗だねぇ、向日葵」
アスナは横目でちらりとスバルを見ただけで、何も言わずに少しだけ頷いた。
「アスナに聞きたいことと、お願いしたいことがあるんだ」
「……なに」
ここで初めて、アスナはスバルへと顔を向ける。
「うん……タカムラさんに張り付けてある『伍長』って……まだ、いる?」
「……いる。なんで?」
「他の人には内緒にして欲しいんだけど……彼が端末を使う時の認証パスワードってわかるかな」
「……むしと視界をリンクさせれば、わかるとおもう」
スバルは、それが出来ることを知っていた。自分とティアナはアスナに関して他の人間が知らないことをまだ知っている。ティアナは隠しておきたかったらしいが、とある騒ぎでばれてしまったのを悔やんでいた。スバルは切り札は最後まで見せるなと言うティアナの口癖を思い出す。スバル自身も『秘密』を持っている事を心苦しく思っていたが、ティアナや八神はやてから固く口止めされていた。スバルは心の中で溜息をつく。
「お願い、出来るかな。……調べて欲しいんだ」
「……わかった」
特に理由も問わず了承したアスナにスバルは感謝する。スバルがやろうとしていることは不正アクセス禁止法に触れる立派な犯罪だ。その片棒を担げと言っているのだから。話を聞いていたであろうボブも、スバルの相棒であるマッハキャリバーも何も言わなかった。スバルは改めて皆の配慮に感謝した。
あたしとギン姉は、家の中で遊ぶことが多くなった。他の子供たちが、あたし達を避けたんじゃなくて。あたし達が、他の子を避けた。怖かったんだ。自分の『力』が。必然的に友達は出来なかったけど、あたしはそれでいいと思っていた。誰かを傷つけるよりは、ずっといい。だけど、そんなあたしを決定的に変えた災厄が起きる。あの空港火災だ。
あの事故で、あたしはなのはさんに助けられた。なのはさんは紛れもなくあたしの恩人で、尊敬もしている。だけど、憧れているわけじゃない。あたしは、『なのは』さんになりたいわけじゃなくて、『あたし』になりたかったんだ。
あの空港火災で、あたしの目に映ったのは。自分たちが被害者だっていうのに、お互いに励まし合いながら助けあう大人達の姿だった。怪我をした人を率先して手当てする人。子供がいないと泣き叫ぶ母親に代わって探しに行く人。あたしは、あんな大人になりたいと思ったんだ。
そしてあたしには、その為の『力』があった。今のあたし──── 『スバル・ナカジマ』の誕生だ。
「……スバル」
早朝訓練後に午前の書類仕事。そんなルーチンワークを熟した後の昼休み。スバルがお腹の虫の大合唱を止めるべく食堂へと急いでいると、アスナに呼び止められた。
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