”狩人”フリアグネ編
五章 「紅世」
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ナが目的地を聞いてくる。
「トイレだよ」
そう言って俺は教室を出た。
教室のドアを閉めた所で、もう一度ため息が出る。いやいや、シャナには悪意なんて微塵もないと分かってはいるんだが、アラストール共々、行動理念が分かりやすいというか。
なんというか、あそこまでキッパリと言えるのは逆に凄い。俺が言うのも変な話だが。
「とりあえず顔でも洗うか」
実を言うと、あまりトイレに用はなかった。頭を整理するために外に出たのだ。
大体、話も一段落していたし。
シャナに聞いた話を頭で整理しながら、歩いていると、トイレの前で俺を呼び止める声が聞こえた。
「おい、衛宮―――っ!」
そう言えば、学校に来てから始めて他人に呼ばれた気がする。もっとも、叫んでるのか、声を潜めているのかハッキリしない呼び方ではあったが。
声のする方向に振り向いて見ると、クラスメートが三人、手招きをしていた。頑張れ士郎。なるべく自然を装って話を繋がないといけない。
一呼吸をついてから、駆け寄って声をかける。
「何か用か?」
坂井悠二の中学からの友人、メガネマンこと池速人は首を振った。
「まぁ、そうだな。衛宮……お前、よくあの騒ぎの後、事の張本人の近くに居れるな」
その横にいる、美をつけてもいいが、軽薄そうに見える少年、佐藤啓作が続ける。
「勇気があるよな。下手するとお前まで先生共に目をつけられるってのに」
「大体、お前らって、そんなに仲良かったか? 抜け駆けは許さん、許さんぞ」
と最後に絡んだのは田中英太。大柄だが粗暴に見えない人物のようだ。
ちなみにだが、この三人の評価は全て坂井悠二がしていたものだ。なかなかどうして、的を得た評価だと思う。
「別に、仲が良いとかそんなのじゃない」
思わず言葉を濁す。残念だが、これが俺の精一杯だ。彼らにとっては親しい友人『衛宮士郎』だが、俺にとっては初めて話をするクラスメートなんだから。
しかし、坂井悠二の記憶を引き継いでいるため、『初対面であって初対面』でないという、妙な感覚を覚えてしまう。
「教室は二人きり。まぁ、お前は食べてなかったみたいだが、弁当を食べながら会話をしてたんだ。十分『そんなの』じゃないか?」
「平井ちゃんも、確かに可愛いといえば可愛いけど、なんかマニアックな趣味だな」
「実はロリ属性持ちだったのか、侮れん奴め」
三者三様に好き放題言ってくれる。まぁ、うち二つはほとんど同意なんだが。
確かに、彼女の見た目は中学生ですらない。
「なんでさ………」
自分にそんな趣味はない。………と信じたい。
当然の様に親しみを持って話しかけてくる、三人。だが、彼等が親しんでいたのは俺じゃない。本当はここにいた筈の人物だ。
今朝のシャナとの口論を思い出す。別に口論
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