暁 〜小説投稿サイト〜
炎髪灼眼の討ち手と錬鉄の魔術師
”狩人”フリアグネ編
断章 「現状確認」
[3/5]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
いとな…」
呟きながら士郎は歩く。
実地見聞が必要な場所での確認は終了した頃には、辺りが既に暗くなっていた。
とりあえず俺は家路を辿っている。
無論、自分の家ではない。

元々の体の持ち主『坂井悠二』の家だ。

自分の身体を自分の物と思えない理由は解析によって判明している。
―――姿形が変わった。
―――まるで、作り変わったみたいだった。
先程の意味深な言葉の真意は、これを指していたという訳だ。

どうやら、この身体は衛宮士郎の物ではないらしい。
推測ではあるが、ゼルレッチは俺を転移させる際、俺を肉体と魂に、分離させたのだろう。
そうすれば、あっちでは俺の死体が出来上がる上、術式も簡略化出来る。
人間の身体と魂、どっちが加工しやすいかは火を見るよりも明らかである。
当然、魂だけでは意味がなく容れ物が必要な為、その容れ物に坂井悠二が選ばれたという事だろう。
ついでに言うなら、坂井悠二は偶然、ただのトーチではなくミステスだった。

その結果、どういう訳か彼の中にある宝具の方に、俺はくっ付いてしまった様だ。
同じ様に彼の身体を間借りさせて貰っている同士、引き合うものがあったのだろう。
自分の身体なのに、どこか他人の物の様な理由はこれが原因だ。
そこで問題なのは、衛宮士郎の意思があった所で身体は坂井悠二の物、という事である。
つまり、今の俺は坂井悠二を構成していた材料で作り上げた人形に居座る存在という事になる。
この身が“存在の消失による世界への影響を低減するための物”である以上『衛宮士郎』は『坂井悠二』の役を引き継ぐ必要があると思われる。

となると、学生は学校が終われば、家に帰るのが一般的だ。
それに、坂井悠二はアルバイトをしてなかったみたいだしな。
多少の寄り道はともかく、一晩中街を徘徊したりはしないだろう。
世界に対して、どのような影響が出るか分からない以上は、不用意な行動を取るのは避けた方が良い。
また、活動拠点を確保する手間が省けるという事もある。

「初めて行く家なのに、住み慣れた我が家って感覚は変な感じだよな」
坂井家の目の前に着いた俺は、そう呟いてから帰宅した。
すると、恐らくは坂井悠二の母親であろう女性が、お帰りなさい、と言ってきた。

「ただいま」
不思議と他人の様な感覚がしないことに俺は驚く。
まぁ、それもそうだろう。
この身体の持ち主にとっては実の母親なのだから。
「今日はちょっと疲れたから、このまま寝ることにするよ」
そう言って俺は逃げる様に二階へ上がる。
端から見れば不自然な事、この上ないだろう。
「なんだか悪い事をしたな。きっと、帰りを待っていたんだろうけど」
自分の部屋に入り、扉を閉める。
意識せずとも、ここが自分の部屋だと分かっていた。

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ