”狩人”フリアグネ編
一章 「外れた世界」
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立っているだけの士郎目掛けて、少女と真反対の方向から人影が飛んでくる。
無論、士郎はそれに気付かない。
人影は士郎の背中を狙い、それは完全に死角からの襲撃だった。
急な殺気に急いで振り向く―――が遅い。
あの少女の、何処か懐かしさを感じさせる戦いに安心しきったが故に生じた油断。
何やってんだ、衛宮士郎。
俺は自分で作った油断の負債を、自分の命で支払う事になるのか。
「―――――えっ?」
鋭利な刃が身体を切り裂く感触。
それは肩から腹にかけて一直線に走る。
何が起こったんだ?
直後に焼けるような痛みが身体を突き抜ける。
そこでようやく気付いた。
あ―――斬られたんだな、俺。
気を失ってしまえるなら、どれだけ楽だろう。
しかし、その度に断続的な痛みが意識を現実へ引き戻す。
後ろを向くと、少女が大太刀を握り締めていた。
斬撃の軌道の制止点、つまり俺の腹には太刀の切っ先が見える。
俺ごと切ったんだな、こいつ。
目の前では、まるで吹き出し花火の如く火花が上がっている。
火花の向こうには、腕を切り落とされた無機質な顔を苦痛に歪ませる金髪の女性がうずくまっていた。
「あんまり簡単に釣れたから、拍子抜けしちゃうわ」
少女は笑みを含ませながら言い放つ。
釣れた………ね。
そりゃ、油断していた俺が悪いんだけどさ。
それに女性は憎悪の声で答えた。
「炎髪と灼眼…アラストールの『フレイムヘイズ』……この、討滅の道具め…」
「そうよ、だからなに?」
「私のご主人様が黙ってはいないわ…」
どうでも良いことだが、使い古された文句だなぁ。
もう、痛みが色々と通り越したらしく、返って現状が面白く思えてくる。
身体を切り裂かれたのなんて、いつ以来だ?
いや、狂戦士から剣士を救った時しか経験はない筈。
と言うかそんな経験なんて、そうそう積めるものじゃない。
普通は即死ものだからな。
それが通常の人間だ。
なんだ―――これ。
いや、俺は何度も死んでいる。
死んだ経験がある。
―――考えるな。
―――カンガエルナ。
―――かんがえるな。
今は考えるな、後でゆっくり時間がある。
そうでもしないと、ここで頭が処理能力を越えてしまう。
強制終了してしまったコンピュータの様に、脳がシャットダウンされる。
「でも今は…お前のを先に聞かせて」
少女の声で現実に引き戻される。
いや、正確には刺さっていた刀が引き抜かれた感触に引き戻されたんだが。
言い終えると、少女は女性を左肩口から袈裟に切った。
女性は火花を上げて消えるが、その中から小さな人形が飛び出す。
人形の中に、人形……?
舌打ちをして人形を追撃しようとした少女に向けて、レストランで埋もれ
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