暁 〜小説投稿サイト〜
炎髪灼眼の討ち手と錬鉄の魔術師
”狩人”フリアグネ編
一章 「外れた世界」
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そんな事はどうでも良い

「やったぁ、僕達お手柄だ!」
人形が大足を一歩踏み出す。

―――さぁ、来い。
あの歩幅だ、もう二歩で俺の間合いに入る。


人形は士郎目掛けて走り寄ってきた。
二歩目が地面に着くまでが勝負。
奴に三歩目はない。
即座に士郎は『投影』の準備をする。
設計図は作成済みだ。

「―――投影」

後は魔力を流し込めば投影は完了。
数瞬後には、陰と陽の愛刀とご対面だ。

「―――開始」

―――ッ!?
魔力の潤滑が遅い。
投影が間に合わない―――。

「掴まえたぞぉ!」
視界を覆うような腕に、腹を掴まれる。
これで動きが封じられた。
それもあるが。

――なんて握力だ!?

人形の顔に似合わず、恐ろしい握力。
掴まえられたなんてもんじゃない、このままじゃ握り潰される。
「……ッ。―――投影―開…」

此処で死ぬわけにはいかない、まだこの世界に来たばかりなんだ。
それに、あんな事をする連中を生かして死ねる訳があるか!
人形は大きく口を開ける。
俺を丸々飲み込める程の大きな口だった。
「いただきまーす」

―――やられた!?
人形を睨み付けながら、己の無力さを呪う。
しかし、士郎が喰われる事はなかった。

何かが電光石火の如く人形の腕の間を通り抜ける。
次の瞬間―――。

士郎を喰らおうとした人形の腕は凄まじい勢いの剣閃に断ち切られた。

急な浮遊感。
「―――ッうギャあアぁ!」

片腕を失った人形は叫び声を上げる、その腕の切断面からは火花が飛び散っていた。
幸いにも自分を掴んでいた腕がクッションになったため、それ程の衝撃は無い。

「―――誰だ?」

起き上がる士郎の目の前には小さな背中が見えた。
しかし、内より溢れ出た力がそんな小ささを全く感じさせない、不思議な背中だった。
灼熱の赤の色の髪と黒いコートをなびかせ、袖先からは、美しい大太刀を提げた少女。
俺は昔、似たような出会いをした。
あれは、俺の人生を決める事となった、運命の夜だったな。

「どう? アラストール」
凛とした、しかし幼さを残す声に、どこからか重く低い響きの声が答えた。
「『徒』ではない、『燐子』だな」
「よくも―――、よくも僕の腕を!」
叫び声を上げて、巨大な腕が少女を叩き潰そうと振り落とされる。
この行動が人形の運命を決めたと言って良い。
全く気配を感じる事のなく初撃を入れられたのだ。
この場での撤退は英断であった筈だろう。
「潰れちゃえ――――ッ!」
しかし、人形は戦う道を選んだ。
振り落とされたその腕が少女を潰す事は叶わず、人形は足を大太刀で切り落とされる。
支えを失って倒れた人形の瞳が少女を捉えると、人形の口から
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