第二十三話 〜なまえをよんで StrikerS Ver.【暁 Ver】
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ヴィオへ毛布をかけているキャロの姿を見ながら、先程から掴もうとしても、するりと逃げてしまう思考をエリオは──── 掴まえていた。
彼女が、『人造魔導師』の素体として生を受けたのであれば、言語や意識がはっきりしすぎている。それは何を意味するのか? ……記憶があるのだ。元になった人間の。どうしてこの世界はこうも、理不尽なのだろう。彼女はその記憶を持ったまま生きていかなければならないのだ。……自分と同じように。彼は──── エリオ・モンディアルは忘れていたのだ。いや、考えないようにしていたのかも知れない。『プロジェクト・F』は……まだ、生きているのだ。
桐生アスナは、拳を握り締める。ヴィヴィオと名乗った少女からは、フェイトやエリオ。そしてスバルと同じ匂いがした。それは鼻腔を刺激するようなものではなく謂わば、彼女にしかわからない感覚だ。常人には決して見えないものが見えてしまう彼女の『瞳』が──── それを告げていた。
だが、桐生アスナという少女は、だからどうしたとも思う。考えてみれば、そんな『違和感』は今更だった。あの廃ビル屋上で対峙した二人の少女からも同様の匂いがした。彼女にとって、スバルは『スバル』でしかなく、フェイトやエリオも同じ事だ。彼女にとって余計な事実など、兄が何者であるかという事と同じくらい、どうでもいいことなのだから。
アスナは握りしめていた拳を広げると、穴が開くのではないかと思えるほど暫く見つめていたが、思い出したかのようにふらふらと中庭から隊舎へと歩き出した。あの小さな少女が、眠りから覚めたら何をして遊ぼうか。そんな他愛のない事を考えながら。
自室に戻ろうとしていた桐生アスナへと、ティアナ・ランスターが小走りに近づいてくる。酷く慌てているようだった。
「……なに」
「八神部隊長達が聖王教会から戻ってきたわ。……緊急ミーティングだそうよ。場所は部隊長室」
アスナはティアナへ頷きだけを返すと、部隊長室へと向かう。ティアナもそれに倣うようにして肩を並べて歩き出した。
「スバルが……話すわ。『自分』のこと」
桐生アスナは何も答えない。ティアナが横目で伺ってみても、自分よりも幾分高い位置にある顔は──── いつもの無表情だった。
ティアナとアスナが部隊長室へ足を踏み入れると、主要メンバーがすでに揃っていた。その光景はアスナが六課へ赴任してきたあの日の光景と重なり──── 自然とティアナの顔は微笑を浮かべていた。
「……なに?」
「なんでもないわ。ボブ? あの時の映像と音声を記録している筈よね、頼むわ」
『そういう事か……了解したよ』
緊急ミーティングの名目は『先の
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