第二十三話 〜なまえをよんで StrikerS Ver.【暁 Ver】
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なのはは、シグナムとシャッハが建物へと駆けていくのを見送るとアスナへ声をかける。
「それじゃ、アスナは」
なのはは次の言葉を紡ぐことが出来なかった。案山子のように棒立ちになっているアスナの髪が風に吹かれているかのように、ゆらりと踊る。それと同時に周辺の緑が騒いだ。だが、それも一瞬だった。気がつけば桐生アスナは、高町なのはの前に立っており、アスナは視線だけでなのはを促すと、何も言わずに歩き出す。
「ア、アスナっ、どこ行くの?」
アスナはなのはの問いかけには答えず、僅かに視線を合わせたのみだ。いったいどこへ向かっているのか。なのははその問いかけを飲み込んだ。彼女との付き合いは、ティアナやスバルのように決して長くはないが、刹那とも思えるほど短いわけでもない。彼女は少しずつではあるが、桐生アスナという不思議な少女を理解し始めていた。遠ざかっていく華奢な背中を慌てて追いかける。恐らく、この先に待っているであろう小さな少女との大きな出会いに心を弾ませながら。その背中を──── 追いかけた。
なのはとアスナは緑が清々しい中庭へ足を踏み入れる。中央にある噴水が夏の暑さを和らげるように涼しげな水を噴き上げている。二人が暫しそんな光景に目を奪われていると、二階の渡り廊下からガラスを突き破りながら人影が飛び出してきた。前髪が綺麗に切り揃えられているショートカットが凜々しく、両手にトンファーのような物を構えている人物は、シグナムと探索を行っているはずである、シャッハ・ヌエラであった。二人が何事かと驚いていると、シャッハの視線の先には──── あの『少女』がいた。なのはが駆け出したのと、アスナの眉が釣り上がるのは同時だった。
シャッハ・ヌエラの行動は『騎士』としては正しかった。自分の失態を恥じていたのもあるだろう。検査の結果、『人造魔導師』と判断された幼い少女は、完全に無害であるとは決して言い切れないのだ。袖の無いシンプルなデザインのバリアジャケットを身に纏い、トンファー型のデバイス──── 『ヴィンデルシャフト』を構え、じりじりと少女へと近づいていく。
対する少女は驚きのあまり、持っていた兎のぬいぐるみを放り出し、地面へ尻餅をついていた。左右色彩の違う瞳が、いよいよ決壊しようとした時。少女の目の前を何かが、ふわりと通り過ぎた。それは──── 真白な蝶。どこからともなく現れた蝶は一頭、また一頭と増えていった。最終的に六頭まで増えた蝶は、風に遊ぶ淡雪のように少女の周りをふわり、ふわりと踊りだす。少女はゆっくりと立ち上がると、瞳を輝かせた。
「……わぁ」
少女が周りを踊る蝶に手を伸ばすと少女を誂うように、遊ぶように──── 慰めるように蝶は舞う。日差しを浴びて、きらきらと輝く少女の金髪と相まった幻想的な光
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