第五話 DeadWars
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「完全な制御というのは人一人が賄うにはあまりにも不十分すぎることである」
手の持つ槍を眺めながら、凛とした表情の女性はそう口にした。
「重ねて言葉にしよう。 AIと言えど、人ならざるもののの脅威というのは古来より最も人が恐れるものである」
そう口に出し、その手に持った槍をくるくると回しながら地面へと突き刺す。
「ならば、人ならざるものを一体でも、少しでも、制御できれば、人を狩るのは容易い」
誰に説明するわけでもなく、一人そんな言葉を発する彼女は、冷ややかな笑みを浮かべながら、背後を振り向く。
そこには、一組の男女がいた。
カップルなのか、なんなのかはわからないが、二人で笑い合っていた。
とても幸せそうだった。 まるで周りが見えていないほど、どうでもいい世間話に花を咲かせながら。
角砂糖のように、甘い甘い雰囲気。
しかし、そこに。
「グォアアアアァアアアアアアアァアアアアアアア!!!!!!!」
耳を劈くような咆哮と共に、一体のモンスターが現れた。
女は男の背後に回り、男は武器を構える。
よほど自信があるのだろう、男は大丈夫などと、女をなだめている。
しかし、現実はアニメではない。
「ガァアアアアアアアアアアアアアアゥ!!!!」
そこに、二体目のモンスターが『偶然』現れた。
少し動揺する男。 しかし、女が居る手前、その体勢を崩すことがない。
「ギュアアアアアアアアアアア!!!!!」
「ゴォォォオオオオオオオオオオオオッッッ!!!!」
「グォァアアアアアアアアアアアアアアアアアッッッッ!!!!!!」
そこに並んで3体の大型モンスターが、またしても『偶然』現れた。
「う、うあ……!?」
流石にこれには驚きを隠せず、男は転移結晶を取り出すべく、アイテムストレージを開こうとする。
しかし、それは遅すぎた。
合計五体のモンスターによる一斉攻撃。
女はあまりの恐怖に硬直したまま、そのまま消えていく。
それを目にした男は言葉にならない悲鳴を上げながら逃げようとするも。
五体の大型モンスターを前にして、逃げれるわけがなかった。
あっという間に周りを固められ、あっけなく殴り殺される。
男女が消えたその場には、五体の大型モンスター。
それらはターゲットが消えたことで、各々バラバラに散っていった。
「人は他人の不幸を見ることで安心感が持てる。 ああはなりたくない。 ああ、自分じゃなくてよかった、と。
他人の不幸は蜜の味、というが、これはこれは……」
手に持った槍を地面から引き抜き、両手でそれを愛おしそうに握ると。
「幸せから不幸へと変わる瞬間を見るのは、やめられない。 これは最早麻薬だ」
そう言って、女は恍惚に浸る表情で体を震わせる。
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