第三話 PlayerKiller
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実から目を逸らしたいのか。
ただ、俺は何度も、フレンドリストを開いたり、閉じたりを繰り返している。
「……馬鹿野郎」
ただ、口から出た言葉は、その一言だけだった。
二人に向けてかける言葉がそれというのは、あまりにも、おかしい話ではあった。
だが、それしか、出てこなかったのだ。
死んだら、何にもならない。
死んだら、二度と戻ることはない。
永遠の喪失とはそういうものだ。
ここが少年漫画の世界で、愛と勇気でどうにかなるシナリオだったなら。
ここがアニメやドラマの世界で、希望と可能性が溢れる世界だったら。
どれだけよかっただろう。
サニーさんもホイミもいなくならなかっただろう。
きっと俺みたいなモブキャラは号泣していたのだろう。
だがどうだ? 涙一つすら出やしない。
それどころか、俺は今、こう思ってる。
『俺もこうならないように、生き延びなければ』、と。
二人の死を教訓にして、踏み台にして、生きる意味を再認識している。
わかっている、わかっていた。
だが目を逸らしていたんだ。
この世界では、生き残らなければ、死ぬ。
たったそれだけのシンプルな理由を、俺は日常という言葉で有耶無耶にしていた。
日常なんてものは、現実でも、ゲームでも、こんなに簡単に崩れ去る。
現実と非現実の狭間なんて、実はそんなにないんだ。
二十六年間生きてきて、それをわかっていたつもりになっていた。
でもそんなことは全くと言っていいほどなくて。
こんな場面に直面してから、ようやく実感できたんだ。
『戦わなければ生き残れない』『疾走する本能』『目覚めろ、その魂』
どこかで聞いたキャッチコピーが、頭の中でぐるぐる回る。
そうだ……俺は、死なないために、戦う。
今まで胡坐をかきすぎていた。
大人気ないと思って少しだけ、自重していた。
ダメな大人でも、本気にならなきゃダメだ。
だから、本気でやろう。
ゲームをやってる子供達に、見せてやらないといけない。
ダメな大人でも、本気でやれば、凄いってことをな……!
装備している大剣を眺め、少しだけ、己を奮い立たせる。
こんな大剣じゃもうダメだ。
本気でやるなら、本気の武器を。
幾ら苦労してでもいいから、大人の武器ってやつを、作らないとな……!
そう思いながら、立ち上がる。
まずは、素材を集めに行こう。
夜だろうと関係ない。 思い立ったらまずやる。
それがきっと最良で、最善で、俺の意思の強さを確認させてくれるだろうから。
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