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亡命編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第八十二話 フェザーン謀略戦(その4)
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しかしルビンスキーは動じなかった。
「全て推測だ、何の証拠もない」
平然と言い切った。正面を向いたままレムシャイド伯を見ようともしない。見事なもんだ、ここまで来てふてぶてしさを取り戻したか。もっとも証拠が無い、というのはいただけないな。疑わしきは罰せずは刑事裁判の世界では通用するかもしれんが政治の世界、マキャベリズムの世界では通用しない。やられる前にやれが鉄則だ。間違っていたならその後で泣けば良い。
「そうですね、全て推測です」
「……」
ルビンスキーとレムシャイド伯が俺を見た。リンツ、ブルームハルトも俺を見ている。多分皆俺を見ているのだろう。折角だ、にっこりと笑みを浮かべてやった。
「アドリアン・ルビンスキー、もう少し私の推測に付き合ってもらいましょうか」
ルビンスキーの視線が動いた。動揺しているな、必死にそれを押し隠そうとしている。堪えられるかな、ルビンスキー。
「マンフレート二世の時代から四十年ほどさかのぼりますがマクシミリアン・ヨーゼフ帝の死後、コルネリアス一世が帝位に就きました。そして大親征が起きますが、この戦いで同盟軍は二度に亘って大敗北を喫しています。オーディンで宮中クーデターが発生しなければ宇宙はコルネリアス一世によって統一されていたでしょう。さて、このクーデター、偶然ですか?」
執務室がざわめきに満ちた。シェーンコップも愕然とした表情をしている。
「まさか、卿はあの宮中クーデターは地球の仕業だと言うのか?」
喘ぐような口調だった。レムシャイド伯の両手は硬く握られている。俺が微笑みかけると伯が怯えた様な表情をした。おいおい俺達は友達だろう、そんなに怯えるなよ、悲しいじゃないか。
「さあ、どうでしょう。しかしあの時期、地球は既にフェザーン回廊を発見していたはずです。そしてフェザーンを創設し同盟と帝国を共倒れさせるという方針も確立していた。自由惑星同盟が滅びていればフェザーン回廊など何の意味も無かった。当然ですがフェザーンも存在していない……」
「馬鹿な……、そんな事が……」
あのクーデターについては何も分かっていない。原作を読んでも宮中でクーデターが起きたとしか書いていない。この世界で調べても分からなかった。クーデターを起こした人間は皇帝コルネリアス一世の信頼が厚かったらしい。クーデターを起こしたためかなり悪く書かれているが有能であったことも分かる。
クーデターを起こした人間は皇帝の信頼厚い有能な重臣だった。当然ではある、皇帝が留守を任せるのだ、馬鹿や信頼できない奴に任せるはずが無い……、にも拘らず彼はクーデターを起こした。何故か……、その理由が分からない。
クーデター鎮圧後、皇帝コルネリアス一世は再親征を行わなかった。財政的、軍事的な余裕が無かったからだと言われている。だ
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