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亡命編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第八十二話 フェザーン謀略戦(その4)
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なかったのだと思う。
「私はこう思うのですよ、レムシャイド伯」
「なんだ」
また身を乗り出してきた。
「同盟の政治家達がマンフレート二世に望んだのは和平よりも国内改革ではなかったかと」
「……休戦状態か……」
「はい」
レムシャイド伯が目を瞑ってウームと唸っている。面白い爺さんだ、ルビンスキーの事など眼中から無くなっている。
「同盟は和平は難しいと考えたのではないかと思うのですよ。帝国は対等の存在を認めない。和平を結ぼうとすれば必ず従属を求めてくると……」
「同盟はそれを嫌った……、卿はそう言うのだな」
「はい。無理に対等の和平を求めればマンフレート二世の立場を弱めかねない。同盟政府が名目だけの従属を選択しても市民は反発するだろうと考えた。つまり和平は長続きしない、であるならば休戦状態による共存を考えるべきではないか……」
またレムシャイド伯が唸った。いや伯だけじゃない、彼方此方で唸り声が上がっている。
「マンフレート二世が暗殺されなければ彼の後は息子が就いていたはずです。そうであれば改革も継続され休戦状態も続いた可能性が有る。国交は無いかもしれませんが共存は出来た。和平を結んだのと同じ状態でしょう」
「うむ」
議会民主制では主として選挙によって政権交代が起きる。選挙では当然だが相手の政策の不備をあげつらう事になる。となればその貶した政策を引き継ぐのはなかなか難しい。相手を貶して政権を取りながら実際の政策は貶した相手の政策を継承する。政権交代の意味は何だ? となるだろう。
一方君主制であれば失政が有れば暗殺される危険が有るというのは誰でも分かっている。死にたくなければ安全な実績のある政策を採るのが一番なのだ。父親が善政を布いていれば周囲には父の政治を受け継ぐと言えばよい、親孝行な息子だと周囲の好感を得ることも出来るだろう……。改革が成果を上げていればその政策が継続された可能性はかなり高い。
「地球にとっては最悪の状況でしょうね。帝国と同盟が戦争をすることなく共存し繁栄していく。フェザーンは中継貿易で繁栄する事は出来るかもしれないが地球が復権する可能性は低くなる。マンフレート二世が暗殺されたのは和平よりも改革が原因でしょう。地球はマクシミリアン・ヨーゼフ二世の時に有った休戦状態が来るのを恐れた……」
「……」
「マンフレート二世暗殺後、同盟は帝国との和平を諦め戦争を選択します。和平だけでなく休戦の可能性も無くなったことで戦争を選択するしかなかったのでしょう。つまり共倒れの道を歩み始める事になった……」
執務室の中に沈黙が落ちた。張りつめた静けさだ、痛いほどに部屋は緊張している。
「そうか、そういう事なのか、ルビンスキー」
押し殺した低い声だ、怒りに沸騰しそうなほどに煮えたぎっている。
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