TURN108 トライアスロンその八
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しかしその一瞬が今は長かった、まるで永遠の様に。
コンピューターによる判定が出た、その結果はというと。
「東郷毅!優勝!」
審査員の一人である若い女性の海軍士官が宣言した、その瞬間競技を観ていた全ての者が声を挙げた。
「よし、長官さんだ!」
「東郷さん優勝だ!」
「やったな!」
「凄いぜ!」
皆彼に歓声を送る、東郷はゴール地点からトラックの中に入りながら彼等に右手を挙げて応える、その横では。
スカーレットは待っていた真希に向かう、そしてだった。
「御免なさいね、約束を守れなかったわ」
優勝出来なかった、約束だったがそれが出来なかったというのだ。
「メダルはね」
「メダル、頂戴」
真希は顔を上げて母にこう返した。
「お母さんのメダルね」
「私のメダルを」
「うん、お母さんのメダルをね」
金ではなくともいいというのだ。
「それ頂戴。くれるって約束だよね」
「それでいいのかしら」
「御願い」
真希はあえていいとは言わなかった、こう言った。
「それをね」
「わかったわ。それじゃあね」
スカーレットは娘の言葉に微笑みで返した、そしてだった。
審査員から貰ったその銀メダルを娘の首にかけた、それをかけ終わると。
その場に倒れ込んだ、東郷はその妻を地に着く直前で抱えそのうえでそこに駆けつけてきた柴神に対して言った。
「ではですね」
「うむ、今からな」
「洗脳を解きますか」
「石のことはだ」
スカーレットを洗脳したカテーリンの石のことも言う。
「おおよそ察しがつく」
「あの石は一体どういったものなのでしょうか」
「それはな」
柴神はここでは口を詰まらせた、そして東郷にこう返した。
「あれだ、催眠術に効果のある光を出す石でだ」
「魔術に使うものでしょうか」
「そんなところだ、とにかくだ」
話を適当に濁しそれからまた言う。
「この洗脳については知っていてだ」
「今ならですね」
「どんな強力な洗脳でも解ける」
トライアスロンで力尽きまた娘の笑顔を受けてそれに心を支配されている状況ならというのだ。
「では私に任せてくれ」
「それでは」
こうしてだった、柴神はスカーレットを抱えて医務室に向かった、そこで二人きりになって暫く経ってからだ。
競技が終わったところでだ、彼は東郷のところに来て言った。
「終わった」
「洗脳は解けたんですね」
「そうだ、無事な」
成功したというのだ。
「医務室に行くといい、意識も戻っている」
「では真希と共に」
ここで真希を見た、丁度その手を引いているところだったのだ。
「今から行きます」
「そうするといい」
こうしてだった、東郷は真希と共に競技場の医務室に向かった。スカーレットはそのベッドで半身を起こし
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