ウェルカム・トゥ・ザ・サマー
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間もなく去ることになった。
IS学園へと帰る途中、俺たちの間には会話らしい会話はほとんどなく、鈴の顔を見れば、さっきの出来事の記憶を今すぐ消し去りたいとでも思っているようなそんな表情だった。
日は改まって次の日。
夏休みになってようやく寮にプライベート空間を獲得していた俺は、エアコンの効いた涼しい部屋でベッドの上で寝転んでいた。
そんな時、激しくドアが何度もノックされたかと思うと、ドンッという乱暴にドアを開ける音とともに、部屋に侵入してきた人物がいる。
その侵入してきた人物の歩幅は小さいらしく、小気味よいリズミカルな足音が俺のいるベッドに迫ってきた。
俺の寝転がっているベッドのそばまできた人物はこんなことを言い出した。
「こ、これ見なさいよ。これをどうするつもりよ」
視線を向けると鈴がいて、表情はかなり焦っているように見えた。
手には携帯電話が握られていて、その画面を俺に見せつけるように向けている。
見れば何かが表示されているようで、それをまじまじと観察すると、そこにはプールサイドで抱き合いキスを交わしている男女の決定的瞬間が映っているようだった。
そこに映っている人物、それは見覚えのある二人で、どうやら俺と鈴のようだ。
俺はとりあえず身体を起こし、ベッドの上で胡坐で座ると、鈴に座るよう促した。
鈴はゆっくりとベッドの端に座る。
「で、その写真は誰から貰ったんだ?」
俺の質問に鈴は、ルームメイトのティナって娘から貰ったと言った。
聞けば、そのティナって娘本人が撮影したものではないらしい。
俺がもう少し詳しい説明を求めると鈴は語りだした。
「ティナの話では、あたしたちがウォーターワールドに行ったその日に、他の女子生徒も遊びに行ってたらしいのね、それでたまたま見覚えのあるあたしたちを見ていたら、あんなことになっているのを目撃して、それでその瞬間を撮影したらしい」
いや、その瞬間だけってことはないんじゃないか? 他にも撮られている可能性もあるだろう。
もしかして、ゲートあたりで俺たちを見つけて追っかけてたんじゃないか? じゃなきゃピンポイントであの場面を撮れるとは思えない。
芸能カメラマンかよ、まったく。
ともかくその画像と話が巡り巡ってティナって娘の元にきたのか。
「どうすんのよ、これ」
俺の目の前に突き出された携帯電話は、顔に近過ぎてもはや画面はボケて見え、むしろ見辛かった。
俺は目の前の携帯電話を優しく手で払うと鈴を見つめる。
「どうするも何も、今まで通りさ。普通にしてればいだろ。そのことを聞かれたら事故だったって話せばいいさ。有りのままに」
「アイツに知られたらどうしたら…
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