ウェルカム・トゥ・ザ・サマー
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に向く前に、この場から撤退しようと踵を返したが、時既に遅し。
「ちょっと待ちなさいよ、アーサー。アンタ、ここに女の子一人を残してどこへ行くつもりよ!」
後ろから鈴のそんな言葉が聞こえる。
逃げるのが間に合わなかったらしい。
俺は振り帰りもせずに答えた。
「いや、急にイギリスまで帰らなければいけない用事を思い出したんだ」
「アンタねえ、すぐにバレる嘘なんかつくんじゃないわよ」
こうして俺は学園に帰ることが出来なくなった。
俺たちは話し合い、せっかくのチケットを無駄にするのはもったいないということで、ウォーターワールドのゲートをくぐった訳だが、鈴の見せる表情は、梅雨時期のどんよりとした空を思わせるそんなそんな表情だった。
「少しは楽しそうな顔しろよ。これじゃあまるで、別れる間際の恋人同士が最後の思い出を作りに来たように見えるだろ」
俺の前を歩いていた鈴はゲートをくぐる途中で足を止めると振り返り、
「誰と誰が恋人同士よ!」
と物凄い剣幕で怒鳴ってくる。
一夏への怒りが未だに収まらないのだろう。
「そう怒るなよ、鈴。俺たちは恋人同士じゃないと解っていても、周りからどう見えるかなんて解らないだろ? 現にほら、そこのゲートにいるお姉さんが俺の話を聞いて笑ってるじゃないか」
「悪かったわ、ごめん。ところで、アーサー。アンタは、その……どうなの?」
鈴は何かを伺うような素振りで聞いてくる。
一瞬、何を聞きたいのか解らなかった俺なのだが、なし崩し的に自分とウォーターワールドに入ることになったことを言っているんじゃないかと予想して、こんな言葉を返した。
「どうなのって、嬉しいに決まってるだろ? 普通、女子と二人でプールに遊びに来るシチュエーションなんて男子なら憧れるだろ?」
鈴は、はぁとため息をついた後、
「アーサーは女となら誰でも良いわけ?」
呆れているようなそんな口振りで話す。
俺には女子の気持ちは解らん。
仕方なく俺とウォーターワールドのゲートをくぐることになったのに、それでもこんなことを言うんだから。
「ごめん。言い方が悪かった。今日こうして鈴とウォーターワールドで遊べるのは嬉しいよ。死んだ父さんと母さんも喜んでいると思う」
「何か言い方が嘘っぽいけど、まあ許してあげる。ちょっと聞き難い話しなんだけど……アーサーの両親ってもしかして亡くなってるの?」
「いや、両親は今もイギリスで元気にしてるけど?」
「アーサー。アンタねえ、勝手に両親殺してんじゃないわよ。少しは感謝の気持ちを持ちなさいよ」
そんな鈴の声がゲート内に響き渡る。
俺たちは今、すごい注目を浴びているんだ
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