予期せぬ障害
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リン、ちょっと来てくれ
ALOのアインクラッドにある自分の家でシノンと久方ぶりの余暇を過ごしているとそんなメッセージがキリトから届いた
「……奴はバカか」
「どうしたの?」
向かいのソファーで俺がコンプリートした料理スキルを駆使して作ったクッキーを小動物のようにかじっていたシノンは、その猫の様な目を細めて首を傾げた
「いや、キリトからメッセージが届いたんだが……っと、直接見てもらった方が早いか」
座っていたソファーからシノンの隣へと移動し、改めて座るとシノンにも見えるようにウィンドウを可視モードに切り替える
シノンは可視化されたウィンドウを覗き込むと一言
「ちょっと来てくれ……って場所も用件を書いてないね……」
「そう、これじゃ行きようがない」
苦笑いしてカップに入ったコーヒーを一口飲む
よほど慌ててたのか、そこまで気が回らなかったのか、これまでの経験上後者だろう
「しょうがない。返信するか……」
とはいえ、毎朝顔を合わせているキリトがゲーム内でメッセージを送ってくることは……たまにあるが、大体が居場所を聞くようなものである
来てくれ、と言われるのはなかなかに珍事だ
状況説明するように催促する旨を手早く書き上げると送信した
「何だろうね?」
「……キリトのすることだからな。全く想像がつかない」
まさに猪の如く、厄介事に突っ込んで行くのがキリトである
「それよりもすまないな。久しぶりに一緒にゆっくりしていたのに」
最近忙しかったのはユウキのことであちこち飛び回っていたからである。ユウキの本来の身体のある病院に行って主治医の方と話をしたり、菊岡と綿密な打ち合わせをしたり、ユウキの遠い親戚と話(物理)をしたり……
内容自体は割愛するが、なんとかユウキの承諾一つですぐに実行できるところまでこぎつけたのだ
「ユウキのためだしね。それに、今回だってリンのせいじゃないし……」
「まあ、俺がシノンに寂しい思いをさせてるのは事実だしな」
隣に座っているシノンの頭に手を載せて撫でる
シノンは俺に撫でられるのが好きらしい。今も気持ちよさそうに目を細め、今にも喉をゴロゴロと鳴らしそうな表情をしている
「じゃあ、今はいっぱい甘えないとね」
「まあ、程々にな」
口調も矯正され、以前のシノンとの差がますます開いてきたことに少々苦笑しつつ、抱き着いてきたシノンを抱きしめる
詩乃の体格は女性としては小柄な方だ。対する俺は男性として大柄な方である
ようするに、シノンはすっぽりと俺の腕の中へおさまるということだ
「ここが一番安心する……」
完全に体重を俺に預けてきているシノンを落とさないように気をつけながら頭を再び撫でる
キリト
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