第2部:学祭1日目
第7話『再会』
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太い腕をつかむ。
触れた手は、暖かいというより、熱い。
「……どうして……」
誠も、顔が熱くなり、胸が少しずつ高鳴っているのを感じていた。
見かわした唯の目は、潤んでいる。
ぐちゃぐちゃになったジオラマのせいで、外からは見えない。誰か来る気配もない。
泰介は転がって動けないようだ。
しばらく、お互いに何も言えない時間が、続いた。
最初に口を開いたのは、唯だった。
「ずっと、好きだったから……」
誠は、耳を疑った。まるっきりの冗談だと思い、
「あ、ありがとう、平沢さん」
と、とりあえず言っておく。
「ドジだし、天然だし、伊藤君の好みではないかもしれないけど、この思い、桂さんにだって、負けないから!!」
唯の激しい言葉に、彼は呆然となる。
「え……?」
それでもまだ、冗談だと思った。
「学校だって違うし、桂さんや、あの子よりも付き合いは深くないかもしれないけど・・・
ずっと、ずっとずっと、好きだったんだから!!」
ドンっとした告白に、彼は思わず圧倒されてしまった。
「……好き……」
「……平沢……さん…………」
誠は生唾を飲み込む。
緊張のあまり、体が硬直していた。
スッ
気がつくと彼のこめかみに、唯の右手が伸びている。
彼女の細い手が、誠の頬に触れて……。
「だめですよっ!!」
誠は思わず、唯の手を払いのける。
「すでに俺には……言葉が……」
「伊藤君……」
そむけた誠の横顔が、唯にはしおらしくて仕方なかった。
「それに、世界だっているし……すでに迷っているんですよ……」
…………
唯は気持ちを、どこにぶつけたらいいのかわからなかった。
「……わからないよ……」
膨れ上がっていく気持ちを抑えながら、唯は誠から離れていった。
ぐちゃぐちゃになったお化け屋敷のセットをどけながら。
前髪に隠れて、唯の目はみえない。
「……!」
誠の腹の奥底から、ひやりとした感触がどんどん広がっていった。
「待ってください! 俺も、本当は……!」
セットを飛び越えながら誠は駈け出し、唯の腕をつかんだ。
誠の手が触れた瞬間、
その瞬間、唯の頭で、何かがはじけ飛んだ。
振り返って誠を真剣な目で見つめ、いきなり彼の口を口でふさいだ。
「…………!!!」
誠を見ないまま、唯は目を閉じ、彼の胸に手を当て、キスを続けた。
ずっと口の感触を味わっていた。
男のごつごつした体に反して、口だけは柔らかい。
「……」
今度は誠が、自分から唇を唯に押し付けてきた。
そのつもりはなかった。が、本能的に唯への思いに、答えようとも思った。
短いはずなのに、2人とも、それがずっと長く、感じられた。
「!!!!」
もちろ
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