暁 〜小説投稿サイト〜
Cross Ballade
第2部:学祭1日目
第7話『再会』
[14/17]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
入るのを見て、律はため息をつき、
「だーから、奪われたら別の奴を探しゃあいいって」
「まあ、誠が私の彼氏になって、桂さんや平沢さんとも和解できるのが理想なんですけどね」
 話していると、七海が息せき切って駆け付けてきた。
「大変だ! 大変だ! 大変だ!!」


 小高い場所で、秋の木枯らしが吹きこむ。ベンチの横で、無数のボイラーが、ファンを回している。
 ここは榊野学園の屋上だ。

「ううーー、寒い……お化け屋敷壊しちまったし、どうしようかな……」
 青いベンチで、澪は肩を抱えて震える。
 隣の言葉は、目を泣き腫らしていた。
「あ……そっか……」澪は言葉に目を向け、「桂のほうがショックだよな……」
「そうじゃなくって、嬉しいんです……」
 言葉の口元には、微笑みがある。
「あ……」
 澪は思わず、頬を赤らめた。
「私、ずっと男子からやらしい目で見られたり、そのことで女子からも冷たくされてたんですけど……。
私のこと、心から気にかけてくれる人がいましたから」
「あ、いや、その……」澪は横を向きながら、「今度あんなことがあった場合、思いっきり玉蹴るべきだと思うぜ。律から教わった護身術なんだけど、効果てきめんだし」

「……」
「それより、伊藤に連絡しなくていいのか? たぶん探してると思うぞ」
「誠君には、すでに連絡しました。 秋山さんは大丈夫ですか?」
「ま、メールは送ったから、大体みんな納得してるだろう」
 目を丸くする言葉に対し、
「こんな感じで、グダグダやってんのさ……」澪は言ってから、話題を変える。「どうだった、うちのライブ?」
 ふと、言葉は悲しげな表情になり、
「……ごめんなさい……実は用事があって、ライブに行けなかったんです……。本当は、いきたかったんですが……」
 それを聞いて、澪は急にズーンとなってしまった。
「そうか……残念だな……」
「でも! 秋山さんのベースも歌も、本当は聴きたかったんです!! 本当なんです!!」
「ほんとに?」
「はい。」
 沈んだ気持ちが、急に浮き上がる。
 言葉の手を握り、
「嬉しい! 是非とも聴いて!
『ふわふわ時間』。
私が詩と曲を作ったから、自信あるんだ!」
 澪は胸に手を当て、アカペラで歌を歌い始めた。


 階段から屋上へと出ると、急に冷えた風が吹き込んだ。
 唯には初めてだが、誠にとっては、おなじみの場所であった。
 かつて言葉や世界と一緒に食事していた場所。
 だが同時に、自分と世界がホテル代わりに使っていた所にもなっていた。
 その意義深い場所で、歌声が聞こえてくる。

『♪キミを見てると いつもハートDOKI☆DOKI
揺れる思いは マシュマロみたいにふわ☆ふわ♪』

 放課後ティータイムのライブ
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2025 肥前のポチ