変態と紳士の境界線上 その三
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でぐるぐると巻いてある、少女の身の丈ほどもありそうな大きなハリセンが握られていて、それを少女は空中で振りかぶると、俺の頭を殴った。
ばしっ。
乾いた音が響き、その音とともに世界が眩しいほどに輝き始める。
今まで見ていた光景が段々とぼやけてくる。
「夢は終わりです。機会があったら、またお会いしましょう」
何て少女の声が聞こえた気がした。
夢は終わりか……あの金髪ロリの名前を聞き忘れたとか、なんで俺の名前を知っていたのかとか色々と謎は残ったが、やっと元の世界に戻れるのかと安堵のため息をついていると、眩しいばかりの光に身体は包まれ、目の前は真っ白になった。
回想終了。
そして冒頭にもどる。
臨海学校の二日目はこんな感じだったはずだ。
回想を終えた俺は、天井をしばらくぼーっと眺めていると、するするとスライド式のドアが開く。
誰かが来たようだ。
見れば、篠ノ之だった。
「ベインズ、気がついたのか?」
寝ている山田先生に気を使ったのか、控え目な声を出して、足音を立てないよう静かに俺の方に近づいてくる。
「見舞いにでも来てくれのか? ところで、他の皆は?」
山田先生の近くに正座で座った篠ノ之。
「私だけだ。一夏が……その、好きな女性に見舞ってもらえれば、怪我のなおりも早いだろうから行ってこいって」
「なるほど、ね。でも篠ノ之は、一夏ことが好きなんだろ?」
「何だ、知っていたのか」
「当たり前だろ? 気づかないのは、一夏くらいのもんだ」
「そうか、そうだな……。ベインズが私のことを好きだと言ってくれるのは嬉しいが――すまない、お前の気持ちに応えることはできない。その代わり、名字じゃなくて下の名前で呼ぶくらいは許してやろう」
箒は振った男の前には居づらいのか、すぐさますくりと立ち上がると、部屋の出口へと向かう。
部屋の外に出ると振り返ることなく、
「早く怪我をなおせ」
と言ってからドアを閉めた。
俺は今、箒に振られたんだよな。
好きでもないが、嫌いでもない女性に振られた訳だ。
何だか、とても複雑な心境である。
人生にセーブポイントなんかないけれど、セーブポイントからやり直してーと心の中で叫んでいた。
この後どうなったかと言うと、目を覚ました山田先生にたっぷりと説教を食らうことになった。
それも、涙を流しながらだったため、俺はかなり慌てた。
一応、俺も男だったようで、女性の見せる涙に弱かったらしい。
どうしていいかわからず、すみませんでしたと言いながら、何度も頭を下げることになった。
しかし、まさか山田先生に泣かれるとは思わなかった。
生徒思
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