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空を駆ける姫御子
閑話4 〜彼女達の日常
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─ なのはを助けて





──── PM 08:27

 満身創痍。足を引きちぎられ滑稽にも、男に出来たのは芋虫のように這いずりながら物陰へ隠れる事だけだった。口からは品のない憎悪と悪態が転び出る。当然と言えば当然で、男をここまで追い込んだ者など今までいなかったのだから。男は痛む足を庇いながらも、どうやって逃げ果せるかを考えていた。

 男の優れた察知能力はまるで役に立たず。男の力も、自慢のスピードもだ。だが、まだ自分は生きている。生きてさえいれば又、快楽の日々が待っている。次は殺してやる。だが男は知らない。()は生粋の狩猟者だと言うことを。唐突に感じた気配に男が後ろを振り向くと──── それはそこにいた。

 無感情な瞳が男を見下ろしている。化け物に出会ったかのように体が動かない。男は何処で間違えたのか。あの女をまた狙ったことか。それとも、こいつに出会ってしまったからか。……あぁ、そうだ。こいつは化け物だ。最初から勝てるはずも無かったのだ、こんな化け物に。男の畏怖などまるで意に介した風もなく。それは只、淡々と。男の息の根を止める為に動き出す。

──── 彼に狙われて生き残る術などないのだから。





「で? なのはさんの部屋に出たゴキブリを退治したのが、それ?」

「……アシダカグモの軍曹君です」

 『伍長』の次は『軍曹』か。二つとも階級の簡略化の為に管理局でも随分昔に廃止された階級だ。

「何で軍曹?」

「……つよいので」

「あぁ、そう……」

 テラスにあるテーブルの上に威風堂々と佇んでいるのが、アシダカグモと言うらしい。でかい上に足が長い。足を含めると10cm以上はある。見た目は悪いが、このアシダカグモ。アスナ曰くゴキブリなどを補食する益虫らしい。人間を自分から咬んだりもせず、万が一咬まれても毒などは無い為、たいしたことは無いとの事。加え夜行性で大人しく、捕食する対象がいなくなると勝手に出て行くそうだ。更にアシダカグモの唾液には殺菌作用があり常に自分の体を殺菌しているという綺麗好き。他の害虫のように疫病を運ぶ原因にもならない。だけど、見た目が怖いと言うか、気持ちが悪い。あぁ、だから()()害虫なのか。

 森でミミズを捕っている時にアスナの肩によじ登ってきたので、そのまま連れてきたとの事だった。なのはさんは八神部隊長からお説教中。それはそうだ。ゴキブリを退治する為に部屋で暴れた挙げ句、ストレスで倒れたら怒られるに決まっている。フェイトさんの話によると、数年前に当時住んでいた寮にゴキブリが出たそうだ。食材やデザートなどを食い散らかした挙げ句に、フェイトさんに向かって飛んできたのを、なのはさんが庇って……ご愁傷様としか言いようがない。

「だって、ゴ
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